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令和6年度税制改正の主な内容と営業提案のポイント

 令和5年12月14日に令和6年度税制改正大綱が公表された。法人や個人の顧客と日々接する営業店担当者は、毎年の税制改正に関する情報提供を求められる立場にあるだろう。
 本稿では、法人と個人の別に、令和6年度税制改正の主な内容と営業提案のポイントを取り上げる。
(「銀行実務」2024年2月号掲載)

1 法人への影響

⑴ 中小企業向け賃上げ税制の拡充と延長

① 背景
 日本の雇用の7割は中小企業が担っており、物価高に対応できるよう構造的・持続的な賃上げが望まれる。しかし、中小企業では6割が赤字法人で、税制措置のインセンティブが必ずしも効かない(税額がなく控除できない)構造になっている。
② 改正の概要
 全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%が税額控除される。さらに、中小企業は賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能(繰越控除をする事業年度に、全雇用者の給与等支給額が前年度より増加している場合のみ)となる。
③ 適用時期
 令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用(個人事業主は令和7年から令和9年までの各年が対象)。
④ 営業提案のポイント
 これから賃上げを予定している企業は、たとえ当期が赤字見込みでも賃上げ税制の適用を受けられる可能性があるため、要件を事前に確認しておく必要がある。
 例えば、従業員のために教育訓練費を支出したり、厚生労働省の子育てサポート企業(くるみん)や女性活躍推進企業(えるぼし)の認定を受けたりしているときには、税額控除の上乗せ措置を受けられる場合がある。中小企業庁から最新の情報でパンフレットやリーフレットが作成されているので、営業の際に持参するといいだろう。制度活用検討のきっかけになるかもしれない。

⑵ 戦略分野国内生産促進税制の創設

 電気自動車やグリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ)など、総事業費が大きく、特に生産段階でのコストが高いものを生産・販売する企業について、産業競争力強化法の認定を受けた日以後10年以内の各事業年度について、対象物資ごとの生産・販売量に応じた税額控除(法人税額の最大40%)がされる措置が創設される。

⑶ イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)の創設

 企業が国内で自ら研究開発を行った特許権またはAI関連のソフトウェアに係る著作権について、令和7年4月1日から7年間の間に、それらの知的財産に係る国内への譲渡所得または国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%が所得控除される制度が創設される。

⑷ 中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)の拡充と延長

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