無題006
これはTweetでは書ききれない「心の応援」メッセージを文章にしたものです。
===
無題006
===
砂漠に二人の会話が聞こえた。
「その泉は枯れてしまったのだろう?」
「ああ、もう湿り気さえ残っていない」
「お前はどうするんだ? また湧き出るのを待つのか?」
「周囲の砂は完全に乾ききって、湧き出る気配もないんだ」
「じゃあ、やることはひとつだな。新しい泉を探すんだろ?
人間は水なしでは生きていけない。
私たちにとって、泉ってそういうものだろう」
「ただ、雨さえ降れば、また泉に水が溜まるかもしれない」
「お前は、いつ降るか分からない雨を待つのか?」
「泉を探してる間に、ここに雨が降るかもしれないと思うと…
ここから動きたくない気持ちもあるんだ」
「枯れて干上がった泉に、天の恵みを期待するんだな。
それは奇跡を待つようなものかもしれないぞ」
「ああ、分かってる。
全部分かっていても、僅かな可能性に賭けたい。
俺はこの泉が好きだったんだ」
「お前はずっとこの泉に潤わされてきたものな」
「ああ、毎日を生かしてくれるものだった」
「新しい泉を探しに行っても見つからないかもしれない。
途方にくれて、途中で力尽きるかもしれない。だからか?」
「そうだ。だから私はここに“存在したもの”に賭けたい」
「“存在したもの”にも賭けるのは、お前の自由だ。
ただ、過去にあったとしても、今ここにはない。
雨が降るような奇跡は、いつも起きないから奇跡なんだ。
干上がった泉は、お前を潤してはくれないんだ。
それを忘れるな」
いいなと思ったら応援しよう!
記事を気に入っていただいて、サポートいただけましたら望外の喜びです。「サポートがあった事実」が力の糧になります。微力ながらも人の役に立てるように頑張ります。