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最近の書物とわたし 20/1/20

正直どうでもいいと思いますけど、最近読んだ本のことでも書こうかなと思い立ったのでやります。積読が趣味、もっといえば、本を買うこと自体が趣味と化しているわたしですが、さらに何冊も並行しながらダラダラ読む癖があり、一体いつどの本を読み終わっているのか自分でもわからない次第で。たまには整理してみるかと思ってするのである。大体この秋冬シーズンで読んでいるものを羅列してみる。

テッド・チャン

いや、早川書房が激推しも激推ししていて、海外文学系のポストとか、何だか至る所でその名を見るなと思っていたんですよ。それで年末実家に2週間も閉じ込められることになったんで勢いでポチったんです。

これが。これがもう読み始めたら止まらなかった。

まず、邦訳がでたばかりの最新短編集『息吹』。その次に、前作『あなたの人生の物語』。

わたしSF文学も古典物理学も量子力学も門外漢なので下手なことは言えないのですが、だからこそ驚愕したわけですよ。その、時機を捉え、近未来を明瞭に見渡す世界設定の卓越性。その絶妙さ、緻密さ。

そして、その世界設定とスリリングな展開から、カタストロフィックな結末を予期するも、意外にも毎回、ヒューマニティ溢れる物語に帰結する。

何ということだ・・・!!こんなSF読んだことない。(そもそもSFをそんなに読んだことないんですけど)

預言書・・いや、予言書だろうか、この作品を形容するには。現実味と人間性に溢れた近未来の書。また、(テッド・チャンの宗教的背景に関しては無知なのだが)、あまりにも洗練されたやり方で、宗教的価値観にも目配せをして見せるあたりがまた卓越している。

これはこの高評価も納得だ。文学やSFの文脈で高く評価されるというだけでなく、単純にめちゃくちゃに、めちゃくちゃに面白い。

物理がわかればもっともっと面白いだろうなあ・・・わたし、雰囲気でしか理解していないと思う。ああもったいない。ということでこれを機にトムキンスさんのシリーズを読もうかと思っている。

開高健

近所にできた馬鹿でかい本屋の美術コーナーで、突如開高健のエッセイを見つけたんですよ。ユトリロっていうエコール・ド・パリの画家の作品に対する開高健の批評をまとめた本。

昔、『夏の闇』読み始めたけど3分の1くらい読み進めてもひたすらパリの安宿で女とやってる話が続くから、もうこれはアカンと思って挫折して以来、不勉強ながら開高健には手を出さなかった。が。ひたすら西洋美術勉強中の当方、ユトリロの画集的な意味合いでもこれは価値あり、とこの本、即購入。

で、これがよかった。カッコ良かった。開高健、ただパリで女とやってるだけじゃなかった。当たり前。特に孤独に関する記述が良かった。孤独を愛しているのに人といたい、みたいな葛藤を、硬質な文章で書き記していて、痺れた。

そこからやっと心根を改めて「闇三部作」にチャレンジ。

結果的にめちゃめちゃカッコよかった。開高健が見たベトナム戦争と、開高健が生きたベトナム戦争後。孤独に関する言及、それに「思索は毒だ、身体を腐らせる」と言った思考と身体性への言及、かの有名な「漂えど沈まず」・・わたしは個人的にその辺が刺さったかな。これは繰り返し読みたい作品。まあ、偉大な文学作品にわざわざ素人が批評加えませんよ。ただの感想っス。

しかし、『花終わる闇』で挫折。だって、また早々に当代風のメンヘラが出てきてさ〜〜どうせこれまた開高健とどこぞのホテルでひたすらグデングデンのねるねるねーるね人間みたいになってやりまくるくだり出てくるでしょ?って思っちゃったから。いやーやっぱり今、日本の偉大な文学作品を読み直したりすると、Me Too後の女性の視点からは「オヤ」「イヤ」「ハヤ」ってこといっぱいあるよね。過去の文学にその視点を持ち込むなとも言われそうだけど。それで作品の魅力が落ちるということではないが、偉大な作家でさえ、いや、偉大な作家こそ、女性に対して格別の屈折を抱いていたはずで、それが社会的背景と相まって、文学の中に態度として現れているのであるが、その総体を、現代の我ら女から振り返ると、何というのだろう、「ナルホドなあ」と思えてしまうのだ。それは否めない。それでも文学作品としては魅力的だけど。いやいや。ねえ。難しい。

今わたしの大好きな坂口安吾とか、夫人の著作とか読み直したらどう思うんだろうか。いずれ読み直そう。

いったん休憩

あかんもう疲れた。一旦休憩。あとはラテンアメリカ文学の話をせねばなるまい。それから、西洋のリベラルという価値体系の終焉に関する本をいっぱい読んだからそれも。一体何をいつ読んでいるんだろうかわたしは・・・

やっぱり昨年1年で緩やかに政治的に覚醒しつつあるんだよなあ。ビジネスの本全然読まなくなったし。だいたい書いてあること同じやしな。必要に駆られて必要な知識・ジャンルの本を2時間で読む、だけになった。ビジネス書には、実務以外の何も求めていない。それに比べて政治と文学は格段に面白い。

海外文学って翻訳がなあ・・とか思ってたけど、それも完全な無知。やっぱり柴田元幸さんも、門下生の都甲幸治さんも、作家や作品を見出すところから優れているし。柴田さんの『MONKEY』もいつ読んでも面白いし、翻訳こそ面白いという気になってきた。

このコーナー何?全体的にどうしたいのか全然わからないけど、まあ土佐日記なんで徒然なるままに書きます。それは徒然草。個人的に紀貫之が好き。

ではアディオス。

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33歳、新卒入社11年目にして、終わらない「自分探し」をする皮肉屋の冷笑家です。自嘲気味ながらも、墓場に自分を探しに行く、そのグダグダな軌…

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