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7インチ盤専門店雑記636「エルトン・ジョンのヒット曲2」

「人生の壁 Border Song」は2ndアルバム「Elton John」からのファースト・シングルでして、1970年3月20日リリースです。70年10月26日にセカンド・シングル「僕の歌は君の歌 Your Song」がリリースされ、翌年にかけて大ヒットしますから、見過ごされてしまいそうですが、「人生の壁」の方が半年以上も先です。

恐らく5thアルバム「Honky Chateau」がリリースされた前後、つまり1972年の初夏、ラジオでもエルトン・ジョン特集が繰り返し流されていたのではと思うんです。中学1年の頃に「人生の壁」も「僕の歌は君の歌」も、よく聴いた憶えがあります。どちらかと言うと「人生の壁」の方が好きでした。そして「ロケット・マン」や「ホンキー・キャット」と一緒に、一つの塊のように記憶しているんです。その結果、ここでも自分の記憶を補正する必要が生じてしまいました。

「僕の歌は君の歌」は71年を通してロングラン的に売れていましたから、仕方ないと思うところがありますが、「人生の壁」は2年も前の曲ですから、こちらはビックリです。1972年になっても時々はラジオで流れていたはずなんですよね。

ただ、少し経ってからは、この曲を聴く機会がグッと減りました。何だか学校の音楽の授業をイメージしてしまうイントロが苦手に感じるようになってしまったんです。他の洋楽ヒットとは違う世界のものに思えてしまいました。当時はグラムロックやハードロックなどに夢中になっていた時代ですから、仕方ない気もします。

しかし時代は巡ります。こんどは昔聴き馴染んだ曲の歌詞が分かるようになり、印象が大きく変わった曲がいくつも出てきました。その中の一つが「人生の壁」なんです。この時期から「ボーダー・ソング」と呼ぶようになり、エルトン・ジョンの詞の世界、すなわちバーニー・トーピンの世界にハマりましてね。「ボーダー・ソング」はエルトン・ジョンの好きな曲でもトップ5に返り咲くことになりました。人種差別問題や自省の歌詞、他には見当たらない世界観でした。

そんな1972年でしたが、まさかの秋頃には新曲が届きます。大好きな「クロコダイル・ロック」です。しかもまもなく次のアルバムも出るということで、凄い凄いということになってしまったわけです。…というか、当時のガキ、混乱の極みです。「クロコダイル・ロック」はそれまでとは全然違う曲調で驚かされました。しかも子どもにはウケるメロディでしたね。もうバカウケでした。個人的にはヘタなハードロックよりも好きでした。

年明け直ぐにニュー・アルバムがリリースされます。1973年1月26日リリースの7thアルバム「ピアニストを撃つな Don't Shoot Me I'm Only The Piano Player」です。何とも考えさせられるタイトルでした。何があったんだろうと調べましたが、答えには辿り着けませんでした。アルバムのリリースと同時に新曲「ダニエル」がリリースされました。初めて聴いた時はちょいと残念でした。「クロコダイル・ロック」よりも地味ですし、例の学校の授業のテイストを思わせるイントロが好きになれなかったんです。…今ではイチバン好きな曲ですけどね。

そして、更なる驚きと混乱が待っていました。その年の6月には次のアルバムからの先行シングル「土曜の夜は僕の生きがい Saturday Night's Alright For Fighting」かもうリリースされます。ペースが早すぎというか、子どもの小遣いでは追いつかない勢いでした。それでも「土曜の夜~」は7インチ・シングルで購入しました。大好きなアートワークでした。

アルバムは秋まで待たされましたが、その頃にはセカンド・シングルがリリースされ、大ヒットとなりました。タイトル・チューン「黄昏のレンガ路 Goodbye Yellow Brick Road」です。しかもアルバムはまさかの2枚組、もう追いつきません。次々アルバムがリリースされましたからねぇ…、買い揃えたのは何年も経ってからでした。アルバムでちゃんと聴きかえしたとき、自分はしっかり追いかけていたつもりでしたが、全容が見えていたわけではないことを知り、あらためて驚きました。しかもこの後3年ほどは売れ続けるわけですから、当時のエルトン・ジョンは本当に凄い人気でしたね。

こうやってあらためて振り返ってみて納得もするのですが、「ボーダー・ソング」すなわち「人生の壁」は一連の大ヒットの少し前の曲なんですね。今さらにそのことを思い知らされるのが、7インチ・シングルの相場でして、「人生の壁」の7インチは玉数も少ない上に、とても手が出ない高額アイテムになってしまったんです。ウェブ上では写真が載っておりますが、現物を見たことがありません。

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