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7インチ盤専門店雑記075「Speak Low」

「Speak Low」Walter Bishop, Jr. (1961)


1961年の「スピーク・ロウ」、大好きなアルバムです。何かしらゴツゴツした、ロックに近いものを感じます。ジャズ・ピアノの名演として時々紹介されておりますが、どの部分が名演なのか、最初は理解できませんでした。全然転がりません。まろやかでもありません。ビル・エヴァンスとかとは全然違うタイプです。でも、ちょっとクセになるタイプです。結果として、好きになるのに時間はかかりましたが、大好きなアルバムとなりました。

総じてレベルの高いビル・エヴァンスがどうしてもジャズ・ピアノの聴き始めの頃から中心にいるので、加えてレッド・ガーランドあたりを先に聴いてしまったもので仕方ないのですが、こういうのもありなんだというヤツですね。時間が経つと、こっちの方がいいんじゃね?となってしまったんですけどね。

でも、どこが好きと具体的に言えるほどのものがなく、この盤の好きなポイントはジミー・ギャリソンが攻めまくっているあたりだったりもします。ウォルター・ビショップ・ジュニアのフレーズは流れないので、「訥々としたところが好き」みたいに、文学的賛辞に逃げてしまいます。「あれ、ピアノ・トリオってこんなに面白いものだったんだ」と思わせてくれたのは事実ですけどね。

ちなみにドラムスはG.T.ホーガンという、あまりよく知らない人です。カーティス・フラーやケニー・ドーハムのアルバムなんかで時々目にする名前ですが、それほど個性的なわけでもありません。でも彼、ここでジミー・ギャリソンに煽られたか、結構攻めてます。彼のベスト・プレイなのかもしれません。なんか中盤、ヤケクソみたいなプレイも出てきて本当に面白い盤です。

こういうのを愛聴盤って言うんですかね。他にもっといいピアノ・トリオの盤はあるかもしれません。でもね、これ以上に好きなピアノ・トリオはなかなか思いつきません。フィニアス…、大好きですけど、「ハーレム・ブルース」だけ頭抜けて好き。キース…「マイ・バック・ページズ」とスタンダーズ、はいいけどなぁ。ソニー・クラークはみんな好きだけどな…。どれか一枚と言われたら、やっぱりこれかもしれません。無人島レコ的な愛聴盤でございます。

あ、やっぱりヤケクソ部分もこのアルバムには必要な要素なんだ…、などと聴き終えて感じていたりもします。7インチ盤で単曲聴きばかりしていると、見えなくなってしまう部分かもしれませんね。


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