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さらまわしネタ帳117 - ミスター・ボージャングルズ

自分は同世代の音楽好きと比べると、ブリティッシュ・ロックにハマらなかったクチだと思っています。周囲の音楽好きはハード・ロックであれ、プログレッシヴ・ロックであれ、ブリティッシュ一辺倒みたいなところがありました。自分は全米トップ40やFENが好きだったこともあって、もう少しアメリカンな方に好みが振れます。その一方で、アメリカンなものがお好きな方はカントリーやブルーグラス、カントリー・ロックの方に特化してしまって、ブリティッシュはあまり聴かないという人間もおりました。ま、ブルースしか聴かないという偏屈もいましたけどね。そういう意味では、やっぱり自分はなんでも屋です。

結局そのアメリカン寄りな部分を満たしてくれたのはニッティ・グリッティ・ダート・バンドやロギンス・アンド・メッシーナ、そしてイーグルスやそこから掘り下げていって到達したディラード&クラークといった連中でした。とにかく子どもの頃からジョー・ウォルシュが好きだったのですが、彼の場合、あまりアメリカンということを意識しなくても済むんです。ブリティッシュっぽい曲もありますからね。というわけで、ここでは例外扱いとしましょう。

子どもの頃、英語なんてロクに分かりもしないまま聴いていたFENからは多くを学びました。そこで鳴っていたのは、基本的なフィールドとして、キャラキャラした音色のカントリーやカントリー・ロックがあって、時々ブリティッシュなテイストのハード・ロック・ギターが切り込んでくるようなイメージです。プログレはほぼ無し。ハード・ロック・ギターといっても、モリ―・ハチェットやブラウンズヴィル・ステーションといったブリティッシュでない連中も同じ効果として使われていたと思います。

ウェット・ウィリーやレーナ―ド・スキナードもいい感じでかかってましたね。毎日ではなかったんですけど、新盤が出たときは結構なヘヴィ・ローテで流してくれておりました。チャーリー・ダニエルズ・バンドやドクター・フックなんかもそうです。

そんな中で、随分いろいろな人が歌うある曲がよくかかっていたんです。「ミスター・ボージャングルズ」。ジェリー・ジェフ・ウォーカー作、1968年の中ヒットです。1971年のニッティ・グリッティ・ダート・バンドのカヴァーが最大のヒットでしょうか。後にサミー・デイヴィス・ジュニアが歌ったヴァージョンもよくかかっていたと思います。その他、随分多くの人がカヴァーしていると思います。誰というのが薄れてしまうほど、少なくとも10人以上のカヴァーが耳に残っています。自分はとりわけ好きだったわけでもないと思うんですけどね。70年代のFENでよくかかっていた曲と言われたら、やはりこれというイメージですね。

この7インチ盤は作者の1977年のライヴ盤からシングルカットされたものです

留置場の中での小さな出来事を描写した歌詞は、大人になって、少しは英語もしゃべるようになってから調べて知りました。「なるほど、終盤にタップダンスの靴音が入るヴァージョンがあるわけだ」ということは歌詞を知ってから納得しましたけどね。非常に憶え易いメロディ、加えてニッティ・グリッティ・ダート・バンドの「アンクル・チャーリー~」に収録されていたこともあって、実際に耳にした回数は意識しているより多いのかもしれませんけどね。

これがね、いまだに出てくるんだ、ときどき。睡眠中の夢の中で鳴っていたりして、朝、目が覚めたときにこの曲が脳内再生されていたりするんです。先日もありましてね。ここしばらく、ラジオ番組を念頭に置いて音楽を聴くことが多く、またお店で鳴らすときは音質がどうのといったことを意識しながらということが多く、そういったことを抜きにした、もう少し記憶野の深いところに染み付いているアメリカンな音楽が脳内再生されていると、「アレっ」となってしまうんです。どこかでまとめて聴き返してみて、少し記憶を整理しておいた方がいいなという程度の話なのですが、こういったものに脳内の一部分を占領されると、他のことが手につかなくなってしまうんですよね…。

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