続・下町音楽夜話 0317「真夏の砂町に爆音を」
江東区の外郭団体、江東区文化コミュニティ財団が運営する砂町文化センターが開催する「1960～80年代 レコードの魅力（洋楽編）」という講座の講師を請け負うことになった。当初は5月から8月までの第4月曜夜に開催の予定だったが、緊急事態宣言の発令を受け、6月開講となってしまった。最終回を東陽町の名店ダウンタウンレコードの土田氏との対談形式で行う予定だったが、第3回が対談になるという。その点はあまり問題ないのだが、この最終回の予定だった8月第４週の週末にアップ予定の下町音楽夜話がちょうど1000本目にあたるので、「お祝いしよう」と言ってくれるお客様たちがいらっしゃるのだ。なんだかちょうどいい節目だなと思っていたので、少々残念ではあるのだ。それにしても暑い時期にやるものだ。思い切り汗をかく講座になりそうだ。
緊急事態宣言下とはいえ、準備は進めなくてはいけない。自分のお店は、ランチ屋ではあるが一応酒類を提供する店でもあり、宣言解除まで休業することになった。休業明けはどうせ滅茶苦茶バタバタすることは明らかなので、休業期間のうちにできることはやっておきたい。そんな事情もあり、少々早いが会場の下見と機材の調整を、当初の予定通りに行ってきた。講座当日は15時まで営業して、片付けてからいったん帰宅し、クルマで機材を積んで駆け付けることになる。しかも緊急事態宣言を受けて、文化センターの全講座が20時には終了するようにという指示が出たそうで、予定が前倒しになってしまった。ただでさえバタバタと思われる当日のスケジュールが、さらに余裕のないことになってしまった。
とにかくソーシャル・ディスタンスということで、配席にゆとりを持たせることもあって、大きめの部屋があてがわれた。ウッディな壁はいいのだが、天井からミラーボールが下がっているのには思い切り笑ってしまった。社交ダンスの練習などにも使う部屋らしい。壁一面に鏡があったが、当日これは片付けてくれるという。さすがに音にもよくない影響がありそうだし、だいいちやり難い。鏡を見る習慣がないので、自分の映った姿を見るとギョッとしてしまう。
気になるのが、換気しながらになるということだ。昨今の状況をみれば当然のこと、文化センターあたりはしっかりやるだろう。それでも、一応それなりのボリュームで鳴らしてやれとたくらんでいる身としては、よそ様のご迷惑ではと心配になってしまう。担当者殿、申し訳ありませんが、クレーム処理はよろしくね…。ちなみに機材はYAMAHAのPAとパワード・ミキサーというアンプ一体型の卓を使う。天吊りのスピーカーと移動式のものを比べたら、さすがに天吊りは音がしょぼい。選択の余地なし。音質には拘り過ぎない方がよさそうだ。PCを繋いで鳴らしてみたが、結構なボリュームで鳴らせる。…そこが大事というヤツだ。…何考えているんだか。
砂町界隈は長年勤めていた江東区でもかなりディープなエリアで、用事がない限り立ち入ることはない。前職の関係で、砂町文化センターには何度かは訪れたことがあるが、それでも数えられる程度だ。一応念入りに周囲の道路状況も確認してきたが、とにかく道が細い。慣れない人間がクルマで乗り入れるのは結構骨が折れる場所にある。「そういえば、以前に近くの城東老人福祉センターという施設でも英会話の講師をやったことがあるな」などと昔を懐かしみながらうろついてみた。砂町銀座という有名な商店街はもの凄い人出で、現状ではとても近寄る気がしない。いやはや、どこが外出自粛なのやら。
さて、講座で何を鳴らそうか。選曲は常に全力で取り組む。受講生の年齢が意外に高いという情報もあり、また皆さんそれなりにロックの基礎知識はありそうだということなので、基礎編ではなく中級編に変更することとしよう。1960年代の説明は、ビートルズだけでは片づけられない。スウィンギン・ロンドンや黒人ヴォーカル・グループのブームなども当然視野に入ってくる。サイケな音源をあまり多くすると時間が足りなくなる。自分としては1970年代のブリティッシュ・ロックとシンガー・ソングライターの一大ムーブメントはしっかり時間を割きたいのだ。そしてさらに語らなければいけないのが、その後のパンク／ニューウェーブで、コペ転しつつもどっこいその後はプログレの連中が大活躍する1980年代が待っているのだ。いやはや楽しみだ。
とにかく、遡りで学究的に知識を積み重ねてきただけの1960年代の選曲は要注意だ。ビートルズ一つにしても、みな好きな曲が違う。周囲の誰に訊いても違う答えが返ってくるのだから面白い。それだけビートルズの楽曲は粒ぞろいとも言えるが、かけられるのは1曲、せいぜいで２曲だ。さあ、どうしたものか。ローリング・ストーンズの方は、「サティスファクション」か「ホンキー・トンク・ウィメン」どちらかに落ち着くだろう。この際「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」ではないな。…「シーズ・ア・レインボー」もちょいがけしちゃおうかな。…やっぱり悩ましいな。
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