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続・下町音楽夜話 0309「Automaticでレファレンス」

オークションで安く落としたDJミキサーのクリーニングが、一応満足のいくところまで完了したので、通電し使ってみた。正直なところ、「こんなものかぁ」といった程度の音質とでも言おうか。当然間に何も介さない音の方がいいに決まっているが、もう少しクオリティの高い音で鳴ってくれることを想像していたので、少々物足りない。高音域と中音域の間にぽっかり無い音があるような気がする。低音域はバランスをとるのが難しいほど出てしまう。結果的に中低音が細い。

これが古い機器だからか、自分の技術不足かは分からないが、CH4に繋いでアナログを鳴らしたときの音質は満足できていない。これが不思議なもので、CH2のCD/DVDのデッキから鳴らした音は特別不自然でもない。普通に聴こえるのである。ひょっとしてフォノイコライザーの性能かとも思うが、普段使っているものはプリメイン・アンプに内蔵の特別いいものでもないので納得がいかない。

仕方なしに、以前使っていたオーディオ・アルケミーというメーカーのフォノイコライザーをかませてCH3のLINE側に繋いで使ってみた。こうすれば少しはまともな鳴りになるかと思ったが、さらに満足できない。クセのない音質にはなったが、そもそもインプット・レベルが異様に低く、どうにもおかしいのである。おっと、まず疑うべきものがあるではないか。…ケーブルか?

とりあえずAmazonベーシックのケーブルを取り寄せてみた。最近はオーディオ周辺機器やケーブルでMade In China以外のものを見つけることが難しい状況だが、Amazonベーシックがコスト・パフォーマンスはよい。ケーブル類に凝るとロクなことはないと思っているので、高いものは使わない。安いものを時々交換しながら、というのが自分流である。

Amazonベーシックは価格設定が謎以外の何物でもない。1.2mを2本買うより4.6mを10本買う方が安いのである。何かの間違いではないかと何度も見直したが、間違いではなさそうだ。現在使っているRCA2ピンのケーブルを一新しようと思い、10本買ってしまった。少々ダブつき気味のロング・ケーブルの整理をしっかりやらなくては…。

そういえば店の造り付けオーディオ台はレコード・ラックと素材が合わせてあり、ケーブルを下すスペースがとってあるのだが、恐ろしく取り回しは悪い。ケーブルは長めでないとうまく繋げないのであった。結果オーライというヤツか。そして全て繋ぎ変えてみて音出しをした瞬間、唖然とした。こうも違うものかと驚いたが、要はフォノイコライザーを繋いだケーブルが死んでいたということらしい。

それにしても、気分がよい鳴りである。あまりAmazonベーシックを褒めたいわけではないが、謎の価格設定のおかげで、店の音楽環境がかなり改善されたようだ。結局のところ、ターンテーブルから取り出しているケーブルは新品から元に戻した。比較的新しいものだったので今回付け替えるべきタイミングでもないということと、どうも元のケーブルの方がメリハリのある鳴りという気がするのだ。ケーブルには凝らないというつもりが、恐ろしく安価に環境改善されることが分かれば、少しは拘るべきということを学習した。

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さて、オーディオ環境を試すからには、レファレンス盤のご登場だ。ここ数年はパット・メセニー・グループ「ついておいで Are You Going With Me?」、ノラ・ジョーンズ「カム・アウェイ・ウィズ・ミー」、レッド・ツェッペリン「カスタード・パイ」、キャロル・キング「イッツ・トゥ・レイト」、7インチ・シングルでドナルド・フェイゲン「I.G.Y.」、同じく7インチのレッチリ「ハイヤー・グラウンド」といったあたりだ。そして今回は、DJミキサーのお試しということなので、宇多田ヒカルの「Automatic」12インチ盤をまず鳴らしてみた。この曲で高中低音のバランスをとってみたが、他では低音が細るので、相当に低音成分が入っているということになる。ヴォーカルは実にスムーズで、面白いほどに1990年代という時代の色が出ている盤だ。

結局のところ、イコライザーを介さずに鳴らして満足できないと、ウチのようにカフェでお客様のリクエストに応えながら聴くような使い方の場合、とても忙しいことになり現実的ではない。今のところ、DJミキサーを介さないで鳴らした音にはそこそこ満足しているので問題はないのだが、…ここまで書いて思い出した。このDJミキサーは店で普段使うために入手したのではなかった。文化センターの講座で使うことを念頭において、イベントで使うことが目的だった。それでも、ある程度店で満足に鳴らせてこそ使えるということになろう。結果的には問題ないが、いろいろ試してみることが面白いわけで、音楽好きというのは、全くもって業の深い趣味である。人生100年時代とかいったところで、時間がいくらあっても足りるわけがない。


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