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7インチ盤専門店雑記136「スティーライ・スパン」

フェアポート・コンヴァンションのアシュリー・ハッチングスが中心となって結成されたバンド、スティーライ・スパンの6枚目のアルバム「トーマス・ザ・ライマー」です。「ナウ・ウィ・アー・シックス」とも言われる、混乱を誘発する彼らの代表作です。フォーキーな人たちですが、ヴェリー・イングリッシュな方たちで、一筋縄ではいきません。アシュリーに2組の夫婦が加わって立ち上がったにも関わらず、途中でアシュリーも抜けちゃうし、1982年頃には創設メンバーはマディ・プライヤーのみになりますが、90年代の終わりにはマディも抜けちゃいます。14人ほどの人間が出たり入ったりしていまだにやっているバンドらしいです。日本では人気がありませんから、情報は全然伝わってきませんので、「らしい」としか書けませんな。

こういうテイストのジャケットは好きなのですが、この表ジャケはどうも好きになれません。手をかけているような、抜いているような、リチャード&リンダ・トンプソンの「ホーキー・ポーキー」に通ずる何かを感じます。騙されているとまでは申しませんが、おちょくられているというか、「どうせ分からんだろ」という匂いがする気もします。

英国でもトラッド・フォークなどがお好きな方たちが好むバンドですが、このアルバムのラスト・トラックはロックンロール・スタンダードの「To Know Him Is To Love Him」が収録されていて、デヴィッド・ボウイがサックスを吹いていたりします。ライヴでは衣装までチェンジして、同じ人たちだと分からないようにして、アンコールでロックンロールをやるんだとか。まあユーモア好きな国民性と申しましょうか、付き合いきれません。

ただ、デザインは凄く好きなんです。裏ジャケが特に好きで、一旦印刷した紙を焼いたんですかね。いろいろ手がこんでいて眺めているだけで楽しめます。

仕掛人はどうもジェスロ・タルのイアン・アンダーソンらしいのですが、その点がさらに怪しさを増しております。あの人たちも恐ろしいレベルでのユーモアをレコード・ジャケットに仕込んでおりますからね。気を付けないといけません。

とにかく、面白いアルバムです。子供向けの伝承歌などの知識がないと理解できない部分があり、英語圏ではない国の人間は、まずその辺で手こずります。タイトルは「クマのプーさん」からとったと言われても、私には分かりません。こういうのを楽しめる人にはおススメしますが、楽しめない人は叩き割りたくなるレコードです。…私は何年かに一度取り出して、聴きながら新たな発見がないか眺めている程度です。毎度いろいろ発見があり、面白いですけどね。…腹も立ちます。



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