さらまわしネタ帳059 - MUD
ラジオ番組でグラム・ロック特集をやるんですけど、これがどう受け取られるか、結構ビクビクものなんです。もう既に過去のものとなった、ほんの一時のブームみたいなものでもありますから、憶えている方は「あった、あった」というようなところなんでしょうか。もう少し若い世代の方々には「ふーん」というリアクションしかいただけないことは十分承知しているんです。
とにかく、グラム・ロックというジャンルがあると言っても、音楽スタイルや共通の曲の傾向があるわけではありませんから、言葉では説明が難しいのですが、グラマラスなロックということで、ハデハデ、ギラギラということだけが共通しているものです。
時期的には1972年頃から75年頃でしょうか。代表曲は72年73年に集中しております。それでも、後々デフ・レパードをはじめとした80sメタルの中でカヴァーされ、再評価されたスイートは76年頃までは人気を維持していましたし、やはりクワイエット・ライオットのカヴァー2曲と、その直後の自分たちの大ヒット2発で80年代中半に復活してしまったスレイドなどは、一時のブームには終わらせていないようです。デヴィッド・ボウイは自身の音楽的な傾向もファッションもどんどん時代を先取りするように変わっていってしまいますから、グラム・ロック期はグラムをやっていたということなんですかね。
代表的なのはT.Rexですかね。私高山が生まれて初めて買ったLPはT.Rexの「ザ・スライダー」でした。ギラギラのロックのわりに、元気が出ないマーク・ボランのヴォーカルはワン・アンド・オンリーです。
シングル中心ということも共通しているかもしれません。矢継ぎ早にリリースしてくるので、曲も短命に終わってしまったような気がします。そういう意味では生き急いでいるようなところが実にロックっぽいわけですが、どちらかと言うとティーン向けでしたから、ポップな印象も拭えません。
中にはあまりお化粧はしないけど、ハデという連中もおりました。マッド(MUD)とかジョーディーとかですが、ジョーディーはフーリガン的というか、コクニー訛りがひどく、フェイス・ペインディング(ただの落書きっぽいものです)している、おバカな英国人のはしりです。
スレイドはわざと間違ったスペルの曲が多い、おバカを売りにしていたわけですし、マッドもジョーディーも知性とは縁がないような連中ですが、実を言うとその部分がよく分からないんです。Wikipediaは英語版はありますが、日本語版はなし、おバカと言いつつも、そもそも歌詞はよく分からないし、何を言っているのかよく分からないわけで、真っ当な評価なんかできるわけないんですけどね。そもそもコミック・バンドかどうかも判断がつかないように思います。
でも明らかにおバカを売りにしているような連中だというのは、映像を観ればわかるのですが、当時は映像なんてなかったので、音だけで判断しておりました。私なんぞは子供ながらに凄いバンドなのかと思っておりました。レコードを聴く限り、演奏は結構タイトでうまかったりもしますからね。
正直なところ、モンティ・パイソンやミスター・ビーンに通ずる英国の笑いは、100%理解できるとは思えません。文化の違いで済ませていいものでもないのですが、気づいていない笑いの種が隠されているようにも思います。MUDのギタリストなんて、こんなおバカをやりながら、クラシック・ギターの先生もやっているというんですから、…やっぱり理解不能です。
マッドは、日本では知名度が低いですけど、英国での評価はかなりのものです。73年から76年までの間に、3曲のNo.1を含む14曲をTop20に送り込んでいます。さあ、どう評したものか。普通のロックと同じものさしで測れる連中でないことは確かです。
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