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続・下町音楽夜話 0323「ブラス・バンド?ブラス・ロック?」

今月のラジオのお題が決まった。「Brass Band」だそうだ。ブラス・ロックではなくてブラス・バンドである。かなりニュアンスが違う。それでもこれはブラス・ロックを含むものと勝手に解釈し、自分は推しのブラス・ロックをかけることとしよう。今回お声がけしたゲストさんがブラス・バンドを演っているということなので、本来のブラス・バンドの曲はお任せするとして、自分が何をかけようがおそらく誰も関知しないだろう。

ブラス・ロックと言えば、シカゴにブラッド・スウェット・アンド・ティアーズにタワー・オブ・パワーにチェイスというベタなセレクションもありだが、少しは考えてみるかといろいろ聞き返している。しかし、これといってピンとくるものがない。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブはいいなと思ったが、アナログ盤で持っているわけではないので諦めた。サルサあたりの好きなものを記憶の奥底から掘り出していたが、結局全部CDだった。金管楽器を「どうしてもアナログで聴きたい」という衝動が、どうやらなかったらしい。

シカゴはとても好きなバンドだが、5枚目までの初期に尽きる。その後のAOR的なサウンドになってしまったシカゴは、「嫌いではない」という程度なので選ぶとは思えない。初期の曲はほとんど好きだが、「ビギニングス」「メイク・ミー・スマイル」「ダイアローグ」あたりは迷うところだ。曲としては「長い夜」や「サタデイ・イン・ザ・パーク」あたりも大好きなのだが、これらの曲のどこが好きかというとギターだったりキーボードだったりするので、語り難い。…やめとくか。

ブラス・サウンドで耳に残っている曲はもちろんいろいろある。ブルース・ブラザーズ辺りもかなり惹かれるものがある。一方ブレッカー・ブラザーズは「サム・スカンク・ファンク」をかけたいなとは思ったが、既に「イースト・リヴァー」をかけてしまったので他にいいものがなかったときの予備候補としようと最初から消極的だ。スパイロ・ジャイラあたりにも好きな曲はあるが、どうも決定打という曲がない。ジャズ系に逃げるのも潔しとしないので、なかなかに悩ましい。

結局のところ、古い曲であればほとんどブラスが入っているのだ。ロックン・ロールが出てきてもブラスは存在感を失ったわけではなかったが、1970年代に入り、ハード・ロックなどになっていったあたりで、ブラスの立ち位置は微妙なものになった。プログレではキング・クリムゾンやピンク・フロイドあたりが、効果的にサックスの音色を使っているが、ほんの一部の曲だし、ラジオでかけるには長くていけない。

そんなこんなで悩みながら販売中の7インチ盤を眺めていたら、いくつか気になるものが出てきた。クール&ザ・ギャングやオハイオ・プレイヤーズなどのソウルものも結構いい感じでブラスが入っている。もちろんアース・ウィンド&ファイヤーはいくらでもいい曲があるし、どれも効果的にブラス・サウンドが使われている。チャカ・カーンやK.C.&ザ・サンシャイン・バンドも好きな曲が多い。ソウルからは1~2曲かけることにしようとは思うが、選曲が悩ましいことになりそうだ。

そして、意外なところで、映画音楽に関しては名曲が多いことに辿り着いてしまった。ジョン・ウィリアムズのおかげとも言えるが、映画のサントラはオーケストラものの名曲がいっぱいある。ただし金管楽器が前面に出ている曲を探すと、これまた悩ましいことになりそうだ。ジョン・バリーあたりの名作サントラから何か選ぶか、もっと遡ってエルマー・バーンスタインあたりの定番曲を持ってくるのも面白いのではなかろうか。面白がって古いサントラをあれこれ聴いてみたが、昔の映画のテーマソングはみな名曲揃いではないか。この辺りはかなり行けそうだ。

そして辿り着いたのがファンファーレである。ELP「庶民のファンファーレ」は金管ではなくキーボードだから落選とするが、この曲は大好きなので、やはり好きなファンファーレというものも見つけられそうな気がしてきた。ロサンゼルス・オリンピックの公式アルバムはジョン・ウィリアムズのファンファーレが収録されているし、他も皆いい曲を提供している。なかなかの隠れた名盤である。

1964年の東京五輪の実況録音盤というものも手元にあるが、このファンファーレはどうも好きになれない。くどいフレーズがかえって古臭さを感じさせる。タイミング的には使ってみたいものの代表だろうが、そもそも開催決定した頃からオリンピック反対の意思表示をしている身としては、ここでかけることを潔しとしない。コロナ云々は関係なく、福島の復興が中途の段階でやるべきではないという理由だったが、もうどうでもよくなってしまった。いまだに中止になっていないことが信じられない。一層政治不信を募らせている。やはりファンファーレは他の方にお任せすることとしよう。

さあ、月一回のペースで続けてきた深夜の生放送も12回目、最終回となる。またまた思い切りすれ違いを演じるだけのような気もするが、好きな曲をかけることに関して、何等遠慮はない。ただただ選曲を楽しみ、音楽で明るさや楽しさをシェアできたらということに尽きる。勝手な思い入れにお付き合いいただけるなら、ぜひチューニングを。



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