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7インチ盤専門店雑記073「Terence Blanchard」

7インチ盤専門店のオヤジとして、また中央エフエム「さらまわし・どっと・こむ」のパーソナリティとして文章を書くということが音楽活動の中心線であることは確かなんです。ただし、それはあくまで「Mainly…」というヤツでして、自分の音楽好きであるということの一部でしかないと考えています。つまり、他にも興味の対象はいろいろあって、音楽の聴き方なんて、こうでなければというものなんかありませんから、アナログに拘っているというのも、実はそうありたい自分を演じているのに近いかもしれません。

自宅のリヴィングは、キッチンと隔てている壁が大きく窓あきになっている構造で、その窓部分はカウンターになっています。カウンターの下にはCDラックがあり、主にジャズ系が並んでおります。毎日ここで食事していながら、ここにあるジャズのCDに関してはまったく見て見ぬふりに近い状況が続いておりまして、少し埃を被ってきました。掃除を兼ねて時々気になるものを取り出して眺めたりはするんですけど、聴くところまではなかなかいきません。忙し過ぎるとは思いますが、やりたいことがいろいろあるうちはパラノイア的にやりたいので、これでいいという自分もいます。

テレンス・ブランチャード、一時ドハマりしたトランぺッターです。音楽性や演奏も好きですが、この人の活動のスタンスが理想的だと思っていたりもします。とにかく、1984年のデビュー盤が「ニューヨーク・セカンド・ライン」です。タイトルからしてバックボーンはニュー・オリンズということを匂わす上手いネーミングです。そして、実に多彩な活動を展開していきます。スパイク・リー監督作品への貢献をはじめとした映画音楽方面の活動が目に付きますが、基本はクラブなどで演奏する一ジャズ・トランぺッターというスタンスがいいんです。

加えて、自分に影響を与えた様々な音楽に対してリスペクトを表するようなアルバムを多く制作するスタンスも何だか好ましいんです。誰か一人に対してというアーティストは多いわけですが、この人の場合は実に多彩で、今度は何かな?と思わせるようなところもありました。…一歩間違えると器用貧乏になり兼ねない危うい活動スタイルではあります。

まあ、どう受け取るかは聴く側の勝手でしょうし、やれることが多種多彩というのは、のめり込めないようなところもあります。それが浅さと見えてしまってはいけないのでしょうけど、この人の場合は上手い具合に奥深さを感じさせてくれます。…一部のアンチ的な評者もいるようですが、自分などはアンチがいるというのはプラスと考えます。敵のいない人間は信用できません。どうしても、あれこれ、やりたいことがいろいろある自分のような人間にとって、こういうアーティストは理想形に映ります。羨ましくもあり、望ましくもあります。こうありたいなという程度ですけどね。

自分自身のことに置き換えたとき、外食店舗でそこそこ人気店になったものの、やれコロナだ、物価高だとマイナス要因ばかりの昨今、どうしても次を考えてしまいます。会社を立ち上げるときに、いろいろな可能性を考えたわけですが、さすがに今からシステム系やらの他の得意分野に挑戦するのも躊躇われます。還暦過ぎて、いつまでも次があると思うなよという自戒もあるわけで、それなら音楽活動の幅を広げるのもありか、などと考えてしまうわけです。

後ろ向きになるよりは、気が散って仕方がない子供みたいに、あれもいいな、これもいいなというスタンスでいたいというだけなんですけどね。ヘンなところで引き合いに出して申し訳ない、テレンス。


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