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7インチ盤専門店雑記070「グルーヴィ・カインド・オヴ・ラヴ」

「グルーヴィ・カインド・オヴ・ラヴ A Groovy Kind Of Love」フィル・コリンズ Phil Collins (1988)

間違いなく、80sヴォイスの代表、フィル・コリンズです。ジェネシス本体でも、ソロでも、まあよく売れました。こういういくつもの顔を持つような人間は好きです。ジェネシスとしてのドラマーとしてこの方が好きなので、まあポップ・ヒットを量産したヴォーカリストという顔が副業的な別の顔と考えていますけどね。

この曲、カヴァーなんですよね。あまりそういう売り方をしていなかったと思いますけど、「You Can't Hurry Love」のヒットもありますから、カヴァーもお好きなんでしょうよ。ただ「どうなのさ」と思う理由がもう少しありまして、そもそも、このヘッダー写真の盤、白レーベルの見本盤です。1988年ですから、一般発売はほぼなし、見本盤のみいまだに流通しております。その盤のクレジットは(Tony Wine - Carole Bayer-Sager)となっております。これ、ピアノ練習曲の「6つのソナチネ」のクレメンティの曲をアレンジしたものなんですよね。そのことには全く触れていないんですよね。

またこの見本盤、面白いことに、ワーナー・パイオニア(株)洋楽部WEA担当のHさんという方が作ったチラシまで入っておりまして、そこにはしっかりカヴァー元がマインドベンダーズだということは書かれておりました。しかもそこには「1966年イギリスのマインドベンダーズが歌って英・米でNo.2まで上昇した大ヒット曲。マインドベンダーズには当時エリック・スチュワート(10cc)が在籍していた。」と、クレジットオタクには嬉しい情報まで記載されております。そうなんです、フィル・コリンズ主演映画「バスター」と連動して大ヒットした曲なんですけど、まあこの辺の事情はどうでもよかったのかな、…と。

ただねぇ、この曲、1965年にウェイン・フォンタナ&ザ・マインドベンダーズの「ゲーム・オブ・ラブ The Game Of Love」というNo.1ヒットがあって、その直後にウェイン・フォンタナから解雇されたものの、翌年にはマインドベンダーズだけでNo.1を再度獲得した曲でして、洋楽史の中でも面白おかしく語られる曲なんです。しかもNo.2ではなく、No.1なんですけどね。

さらに言えば、これ、ヒット曲をいっぱい作った有名作詞家(ホントはシンガー・ソングライターなんだけど、シンガーとしてはあまり売れてないっすね…)キャロル・ベイヤー・セイガ―がまだ10代の頃に書いた初ヒットでして、まだ教職とのかけもちで将来を決めあぐねていた彼女が作詞家としてやっていくキッカケになった曲と言われているんですけどね。しかも「groovy」というスラングを史上初めて曲につけちゃった曲なんですからね。そういう面白い背景を持っている曲なんですけど、説明を省いちゃったんだな、コレ。…まあ、フィル・コリンズ版もヒットしましたから結果オーライなんでしょうけどね。


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