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気まぐれな旅を家族と一緒に楽しみたい

夫と私はどちらも旅行好きだけれど、スタイルが違う。夫は気まぐれにひょいひょいっと行きたい人。私は準備をしながら気分を盛り上げたい人。準備といっても、目的地へのこだわりはない。この世界遺産を一目見たい、とかそういうのはあまりないので、行った先のゲストハウスで知り合った人たちと明日はどこへ行こう、っていうふうにやることを決めるのが好きなんだけれど、行く前にやっておけば時間をセーブできることをわざわざ現地でやるのがもったいないと思ってしまう。例えば宿や交通手段は確保しておきたい(長距離バスに乗りそびれて一日ロスした!とかそういうのが嫌だ)し、洋服や日用品を現地で調達したりする時間はもったいないので準備して持って行きたいと思う。

子どもができると、準備はなおさら必須だ。着替え、おむつ、水分、手拭き、ぐずったときのおやつなどなど。でも夫が突然どこどこへ行こう、と言うときに「えいやっ」と乗っかったら間違いなく楽しい旅になる、と分かっているので、できるだけ夫の発案に飛び乗りたいと思っている。

「明日車でどっか行こう」

特に何も予定がない日曜日だった。土曜日に私は来客があったし、夫は長時間オンライン講座を受けていて目が疲れたと言っていたので、翌日はゆっくり家で過ごすのかと思っていた。そうしたら土曜日の夜中になって「明日レンタカー借りてるからどっか行こうか」と。近場ではなく、ちょっと遠くに行きたい様子だった。いやいや、出かけるなら夜のうちに洗濯を済ませるとか、母の「準備」とはそこから始まるのだよ…急に出かけるって?と思ったが、夫の思いつきは絶対に楽しいものなのでいいよと言った。でも、この時点でどこへ行きたいのかよく聞いていなかった。「とりあえず明日のために寝よう」と。

出発してからBBQ場を予約

翌朝、とりあえず子どもの身支度、1歳2か月の次女の昼ごはん(大人食からの取り分けがだいぶできるようになったとはいえ、出先でうまいことできるか分からないしそんなことに時間を使いたくないので持っていく。こういうのも私がしておきたい「準備」)を鞄に詰め込んだ。富士山のあたりまでドライブしたいらしい。「LINEで行きたいとこ送ったよ」と言われたけれど、前日に何も準備をしていなかったので洗濯したりいろいろやって出発が遅くなりそうだったし、ハイハイと適当に返事をした。

車に乗り込んでからよく確認するとBBQをしに行きたいらしい。しかも「空いているか分からないからちょっと予約の電話して」と。えっそれで空いていなかったらどうするんだい、と思うが、その時はその時で起こったことを楽しめるというのが夫と過ごしてきて分かるようになったので落ち着いて予約の電話をした。が、BBQとなるとまた違う「準備」もいるよ?割り箸とか紙皿とか、家に腐るほどあるのに、そういうものも買わないといけないよ?それにさつまいもとか子どもが食べるものは予め火を入れて持っていけばすぐに焼けるのに?夫は「割り箸は買えばいいじゃん」と言うのだが、先日アウトドアショップで買った、ふりかけるだけで絶品になるというスパイス入りの塩こしょうだけでも持ってきたらよかったと気づいたみたいで「引き返そうか」と言い出した。食い意地が張っておるなあ。笑

買い出し段階から、食いしん坊な夫の片鱗が

夫が探してきた河口湖畔のBBQ施設は空いていた。近くにスーパーがあるというのも調べてくれていたのでそこに立ち寄る。こういうとき、まず子どもの食べるものは何かな、と私は考える。ウインナーかな、じゃがいもかな、チーズかな、と。けれど店に入るなり夫は「ちょっとノンアル買ってきてもいい?」と。おいおい。次に夫が手にしたのは分厚い豚ロース。「厚いのが食べたい」と。包丁ないよ、子どもは分厚いの噛みきれないよ、とツッコミどころしかなかったが、そんなに食べたいかとちょっと可愛くなった。そして美味しそうな牛肉とウインナーを取ってきた。「ねえ、あっちに松坂牛もあったよ」と言ってみると「それでもいいよ?」と言いながらまた食いしん坊の顔をしている。シーフードのセット、野菜炒めのセットなど買ってスーパーをひととおり回ったら、無えんせきのウインナーがあることに気づいた。私が「無えんせきのウインナーあるよ。子どもが食べるからこっちにしよう」と言ったら、夫は何やらもごもごしている。選んだウインナーは自分が食べてみたかったのだと。おいおい。

ほんとうに手ぶらで来てしまったので調味料もない。塩としょうゆを買ったら、長女(3歳9か月)が「レモンもかけてたべたい」と。なかなかオツなことを言うなあ、と思っていたら夫が私以上に目を輝かせて「いいねえ」と共感していた。焼いた肉に塩とレモンが振ってある図が浮かんでいる夫の頭の中が透けて見えるようで面白かった。

夫とのBBQ、楽しいぞ

焼くのは夫に任せたのだが、肉をほんとうにちょっとずつ焼いていく。焼けたら食べて、また次のを焼いて。ホタテをアルミホイルの上で焼く時も、レモン汁と醤油をちょっとずつ振りかけながら食品サンプルかと思うくらい綺麗な焼き色をつけるまでじっくり焼いていた。そしてトングではなく菜箸でちょんちょんと細やかにつついていく。

私の記憶の中のBBQって、大人たちがあれこれワーッと焼き始めて、子どもがどんどこ食べて、キャベツが焦げた、とか南瓜に火が通っていない、とかいろいろなことが起こって、食べ物そのものはそんなに美味しくないけれど最後に焼きそばを作ったらなんとなくお腹がいっぱいになっている、あとはアウトドアの雰囲気のパワーでなぜか美味しく感じる、っていうようなものなのだけど、夫が焼いている姿を見ると家で料理しているのと何も変わらない。丁寧で、「美味しいものを食べたい」という執念が感じられる。実際夫は「このくらいの肉だと塩だけで美味しいねえ」と言いながら美味しそうに自分の選んだ肉を頬張っていた。「私の選んだこの塩が美味しかったよね」と言うと「うん」と返ってきて、私も誇らしくなった。普段、私が苦心してどうにか野菜を食べさせようとしている長女も、夫の焼いたシンプルな焼き野菜を素直に食べていた。

そのあとちょっとドライブして、船に乗りたいという長女の希望を叶えるため遊覧船に乗った。

帰りも、私はついつい道が混むと嫌だからさくっと帰って家の近所で軽く食べて帰ろう、と思うのだけど、夫はせっかくだからと現地で食べて帰りたい人。山梨まで来たしとほうとうの店に入って食べた。案の定、帰りは渋滞に巻き込まれたが、とても楽しい一日だった。

ふらっと出かけるけれど忘れられない旅行

こういう経験は夫とでないとできなかったなあ、としみじみ思う。やっておいたら良かったかもしれない「準備」は振り返ればたくさんあるが、それをなじってつまらなくするか、まあいいやと思って起きたことを楽しむか、は自分の選択なんだなと。それと、外で食べるから、勝手が悪いから、道具がないから、とかいう不都合をマイナスに考えずに、ただ「美味しいものが食べたい」というまっすぐな気持ち(純粋な食いしん坊?笑)でここまでもってくればただのBBQでもこんな美味しい経験ができるのか、ということに感動した。それでもまだまだ子どもが小さいので「準備」しておいたほうが楽しめることは多いが、子どもが大きくなったら、もっと身軽に「これがしたい。行こう!」で旅行できる日が来るといいな。

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