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君に百回『好き』と言ってから死ぬ

〈#01 告白〉

『お前が好きだ』

 この言葉を言うのは何度目だろう。

 俺の名前は『高橋たかはし りょう』。一般的な男子高校生だ。

 俺は『告白病こくはくびょう』と言うものをわずらわい、俺の余命は『告白』を残り百回言ったら死ぬ、と言うなかなか理解できないものだった。

 しかし、好きな人に「好き」というのは普通だと思うが、俺は生憎あいにくその好きな人がいない。

 だから、まずはその好きな人を探してみないといけない。

 一応候補はいる。ストレートな茶髪につややかな唇。それでいて背もなかなかある。彼女の名前は『中道なかみち あおい』と言ういかにも女子力が高そうな女子だ。

「おはよ〜」

「おう」

 これがいつもの会話。何事もない。はずだが、俺からしたら少し緊張する。これが恋というやつか? 煩わしいな。まあでも、そのうち告白相手は決めないとだし。

 気がつけば、今や四時間目。挨拶ぐらいは気がつくが、授業にはまったくと言っていいほど集中できない。いつも蒼のことばかり考えてしまう。何故なぜだろう、と考えていると、本人登場。

「どうしたの? 今日はいつになく気が抜けてるよ?」

「いや、大したことじゃないから大丈夫」

「ほんとに? 相談乗るよ?」

「そうか……じゃあ聞くぞ、蒼は俺に好きな人ができたらどうする?」

「うーん、まあ、人にもよるけど、ちゃんと応援してあげる」

「そうか……ありがとな」

「え? なにが?」

「いや、なんでもない」

「でも、好きな人ぐらいそろそろ作っておかないとね。梁くんとかどう? 誰か好きな人の候補とかいないの?」

「うーん。俺は今のところは……」

「うーん、そっかあ」

 ちなみに、言い忘れていたが、俺と蒼は家がめちゃくちゃ近くて、尚且なおかおさななじみ。よく他の男子から「お前ら付き合ってないの?」とか言われる。地味にイラッとする。

 「今はいない」と、茶化ちゃかしてしまったが、実は蒼のことがかなり好きだった。この気持ちはいつ答えが出るのだろうか。

 ええい、もやもやする。今日! 今日告白しよう。それで振り切れてしまおう。善は急げ、当たって砕けろっていうしね。告白する暇もなく玉砕ぎょくさいしてしまうかもしれないが、やらないよりかはマシだろう。

 その後、やはり授業には集中できなくて。

 じっと、蒼を見つめていたら、気がつかれてたまに手を振ってくれたりする。優しい。

 そして迎えた放課後。

「蒼、ちょっといいか?」

「んー? うん、いいよ。どうしたん?」

「ここじゃ恥ずかしいから屋上に行こう」

「うん」

 そして二人は屋上に向かい、その途中でくだらない話をしていた。今日の夕ご飯とか、好きな歌手はだれだ、とか。

 でも、そんななんの変哲もない日常的が俺は好きだった。

 そうこうしてるうちに屋上に到着。

 今だ。気持ちをはっきりと、しっかりと伝えなければ。

「蒼、言いたいことがある」

「どうしたの?」

「俺は、お前のことが好きだ。今までの暮らしやお前の態度たいどとか、とにかく、全部好きだ。俺はお前のことを、きっと幸せにするから——」

 ここまで来たんだ。最後まで言わないと男じゃない。言え!

「——付き合ってくれ」

 最初蒼は驚いていたが、しっかりと俺の言葉を聞いてくれて、その答えは——

「……うん、いいよ」

 答えは”yes”だった。これで、少しは気が楽になるだろう、と考えていたら——

「えっ⁉︎」

 急に蒼が驚いた声を発した。

「どうした?」

「どうしたもなにも、梁くん、泣いてる」

 何故なぜか、俺は泣いていた。何故かはわからない。ただ、理由として行き着くのは、極度の安心感だろう。

「いや、大丈夫だ。だから……」

「無理しなくていいよ、泣いちゃいな」

 そのあとしばらく気が晴れるまで泣いていたらしいが、声は出なかった。何故だろう。

 恥ずかしいのに、何故だか安心できる。そんな、変わりもしない日常がずっと続けばいいのに。




 ――梁が死ぬまで残り99日。

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