英単語の向こう側、移住してわかったアメリカ人の生活スタイル〜靴と玄関〜
フローリングの床の部屋にテーブルや椅子、ソファを置いて生活をしていても、私達日本人は食事の時にやっぱり箸を使ってますよね?
日本の生活スタイルは近代において大幅に欧米化したけれど、生活の細かな部分は決してそういう訳ではありません。
なので、日本人がアメリカで生活を始めるとそれまでの生活と同じ部分とそうでない部分がゴッチャで、「どうして〜??」という思いにかられることもしばしばです。
生活スタイルの違いには国の制度や地域性、風土の違い、また身体上の相違などいろんなことが関係しています。
「私がアメリカで23年生活した中で知るに至った事柄を発信したら、日本の人達がアメリカを理解する上で少しは役に立つ?」
そんなことを思いながら、アメリカで使われている英単語の持つ意味、背景などについて焦点を絞って書いてみたいと思います。
まずは、生活の入り口、「玄関」から。
1 英語に「玄関」はある?
日本の家屋には必ず「玄関」と呼ばれる場所があります。
外へ出かける時にはそこで靴を履いて、帰って来たら今度はその靴を脱いでスリッパに履き替えるというのがよくある光景です。
家の中は靴を脱ぐ場所より20〜30cmほど高く作られていて、壁際には靴を収納する靴箱や傘立てがあるのがふつうです。
ところが、英語にはこの玄関に当たる単語がありません。
あるのは front door 「(玄関にある)ドア」だけです。
front door は建物や住宅の正面に設けられた一番立派なドアを指し、通常、お客さんが建物に入るために使用するドアのことを意味しています。
「お客さんが出入りする」の言葉通り、その家の住人自体はこのドアから出入りする頻度はあまり高くなかったりします。
というのは、車社会のアメリカでは外から帰ってくる際、ガレージに車を入れてその内側にあるドアから直接キッチンへ入るという作りになっている場合が少なくないからです。
とは言っても、front doorの内側には通常来客と立ち話ができるくらいのスペースがあり、その部分はentryway や foyer (フォイヤー)と呼ばれています。
日本のコンサートホールなどで時々「ホワイエ」というカタカナ名称を目にしますが、これは恐らくこのfoyerのことなのだろうと思っています。
日本のように、ドアの内側のスペースに高さの違いを設けることはありません。
2 靴、その置き場所
靴を玄関で脱いだり履いたりを繰り返す習慣のないアメリカでは、靴を家の出入り口に収納しておこうという発想がありません。
では、アメリカ人はどこに靴を収納するかと言うと、それは各自の寝室にあるクローゼットです。
靴は服と同じように、その日の服装を決めるパーツのひとつになっているので、そうするのが都合が良いのです。
こういうと、日本人なら「土足を家の中に入れるの?」という疑問が浮かぶのではないかと思うので、次にその辺りのことを説明します。
3 家には土足で入らない
日本人が「アメリカ人は靴を履いたまま家の中へ入っていく」と思っているのは大方正解です。(そうでない人もいます。)
ただし、靴底に土や泥がついた状態(=土足)でそのまま入っていくと言うのでは決してありません。
人が出入りするドアの外側には必ず泥除けマット(front door mat) が敷いてあり、内側にも靴底をきれいにするための靴底拭きマット(indoor door mat) が敷いてあります。
家の中に入る時は、一人一人が靴底がキレイな状態であることをちゃんと確認してから入っていくのが常識です。
なので、「土足でウチに入るアメリカ人の家の中は、外と同じように床は土や砂だらけ」ということではありません。
もし、どうしても靴の汚れが取れない場合は、きっと入り口で靴を脱いで入っていくことでしょう。
アメリカではこうすることが当たり前なので、ことさら映画やドラマでフォーカスされることはないのですが、特に人の家を訪問する時にはこのことをマナーとして覚えておかれるといいと思います。
4 アメリカのスリッパ
英語にも slipper という単語はありますが、日本によくあるスタイルの「スリッパ」を見かけることは少ないと思います。
アメリカで通常 slipperと呼ばれるものは、外で履くデッキシューズに似たような(ちゃんとかかとまである)靴を柔らかい皮か布で作った室内履きのことを指します。
アメリカでは、「玄関で靴を脱いで、自分のスリッパに履き替える」という習慣はありません。なので、もちろんスリッパを収納するラックも…。
外から帰って来たら自分の寝室へ行って着替え、その時に外で履く靴をslippersに履き替えると言ったイメージでしょうか。
秋になると、ウォールマート始め、多くのデパートなどでフカフカなslippersが所狭しと並び始め、寒い季節の始まりを感じたものです。
でも、slippersに履き替える習慣のない人も大勢います。
5 いつも靴を履いている文化の裏側
私が住んでいたノースカロライナは歴史的に共和党が支持基盤とされていた州です。
家族には民主党支持者が多かったですが、地域性からするとやはり共和党色が強く、近所の家の中には(鍵のかかった収納箱に入っている)銃があり、銃規制には反対という人が多かったようです。
「自分の身は自分で守る」という伝統と意識から、眠る時以外はいつでも行動に移せるように靴を履いているというのが基本スタイルだという点は十分理解できました。
ただ、日本人の私としてはその共和党色が常に違和感としてあり、結果的にそれがアメリカを離れるに至った一因になりました。(大統領選で T…p が選挙で勝った翌年に帰国。)
日本にも生きづらい点はあるでしょうが、安心と安全に勝る幸福はないと今更のように私は感じています。
なるべくイメージしやすいように書いているつもりですが、質問などありましたら遠慮なくお寄せください。わかる範囲でお答えしたいと思います。
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