HIGH OUTPUT MANAGEMENT 読書感想
原書は 1983 年に書かれており、ビジネス書としてはだいぶ古いものになっているが、それでも今なお読まれていることを考えると、それだけ原理原則が書かれている裏付けになるだろう。
最初目次を読んだ時、その中身について想像することができなかった。一通り読んでみると、マネジメントが必要とされる背景や考え方がストーリーとして構成されており、幾つもの気づきを得ることができた。加えて、淡々とした語りではなく、時折熱くなったり「最後は運だ」と締める章もあり、人間味を感じることができてとてもよかった。
余談として、よく聞いている Podcast である fukabori.fm でも本書が紹介されていた。(この回以外でも 1on1 が語られた最初の本という紹介をされていた回があった気がする。違ったらごめんなさい)
著者がインテルの元CEOということもあり、情報技術に関わる業界の組織でも親和性が高いことが頷ける。
影響力の持つ本ということもあり、要約についてはネットに溢れている。
ここでは個人的に刺さった箇所を記事としてのことしておく。
1. ナッジング(3章より)
この章では、マネージャーの活動をタイプ分けして整理されていた。そして上記で引用した箇所ではナッジングというという行動にスポットが当てられている。具体的には「良さそう」「いいね」「LGTM」のようなキーワードで実現させていくと読み取った。
ナッジング以外の行動として他には情報収集や意思決定がある。この二つの行動はイメージがつくが、一方このナッジングは指示や命令というわけでもなく全体的に方向性を促す、という行為に名前がついており、かつそれが重要な役目の一つとして区別されていることは驚きだった。
そもそも明確な指示や意思決定は重要ではあるが機会としては少なく、ナッジングの積み重ねが明瞭な決定の一つひとつとなるとあり、これは実体験としてもそう振り返る。それに、自分が作業者だったとして、進捗報告などでもらえる「良さそう」は心理的にも大きいと感じる。どんどんナッジングしていこう。
ここまで書いてそもそもナッジングってなんだろうと調べてみたら、行動経済学の言葉だった。
Wikipedia では公衆トイレの画像が出てくる。これは、ナッジの例としてハエの絵を小便器に書いて利用者の飛沫を減らしたことが有名だかららしい。いい話で終わらせてみんな使っていこうぜ!と締めようとしたらまさかの下ネタで終わるとは。
2. 意志決定プロセス(5章より)
意思決定が得意な人が羨ましい。意思決定が遅いことを慎重と言えば聞こえはいいが、慎重な人は意思決定プロセス(ロジック)を明確に持っており、そこに多くのデータや検証を重ねるから慎重なわけで、プロセスを持ってない人はただ意思決定できない人だ(うっ。頭が!)
最初このプロセスを見た時は腹落ちせずに読み流していた。しかし実際に物事を決めるという機会が出た時に、この章を読み返して徐々に理解が浸透してきた覚えがある。自分ごとにならないと話の理解度は違うものだ。
この体験を経て僕は「全員の同意を得なければ」という捉われがあったことにも気づいたし「一度の決定で全てを満たすことが必要」という捉われもあった。決める時は決めてその根拠を明確にし、誤りがわかれば再度討論を重ねてゴールに向かっていく、という一見容易そうにも見えるこのサイクルを回すことが必要なのだ。しかし分かっていても情報量やメンバーの納得度が可変なため当然簡単にはいかない。マネジメントが専門職とされるのがわかる。
この章では、意思決定の難しさについて気持ちを寄り添って言語化してくれている。組織において意思決定に悩んだことがあれば、この章の説明は勇気をもらえるかもしれない。
3. コントロール方式(10章より)
本書曰く、我々の行動は目に見えない方法によってコントロールされているとある。
自由市場原理の力
契約上の義務
文化的価値
これは環境の複雑さ(Complexity)、不確定さ(Uncertainty)、不明確さ(Ambiguity)からなる CUA 要因と、個人の動機づけによって4象限に整理される。
CUA 要因が高くグループの利益、まさにベンチャーという感じだ。本書でも言及されているが、この文化的価値が理想的なコントロールと定めがちだが、特定条件ではその限りではない。
誰にいつ何を期待するかは、全てにおいて文化的価値を高めるところに置く必要はなく、ステップを設けることで徐々に視座を高めていく方がスムーズであり、その際にこの4象限を浮かべておきたいところだ。また、お互いの期待をすり合わせる時にも整理の助けになるだろう。
最後の一文はいい話だったのでこの引用を残しておく。
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