【制作解説】のどかな草原のBGMの作り方【ゲームサウンド】PART4(最終回)

第1回目の解説記事も今回でひとまず終わりです
テーマ作曲として「草原」×「のどかな」という設定でゲームサウンドの制作を解説してきました。

それではいってみましょう

Bフレーズに入ってから1度制作したものの繰り返しが基本形となります

まずはこちら

のどかな草原_Flute5

アレンジされたのはメロディのみで24小節目ですね
全体で見れば4回の繰り返しとなるBフレーズ部分ですが
起承転結に当てはめたところ、2回目であるこの部分は「承」となります
次の3回目で大きな山場、映画で言えばクライマックスに近いシーンとなり
そのつなぎとしてですが「展開」させます

ソミレ

となったこの部分はこの時点での最高音が出ています、なのでリスナーはおっ?と思っているところでしょう

続いて「転」です。ここで2回繰り返していたコードにも変化が訪れます

草原のどかな_NylonGtr4

27小節目から

B♭7/C/F/F

となります。こちらのB♭7についてですがモーダルインターチェンジという考えを元にしています。
♭系ノンダイアトニックコードの類ですね。←検索ワード
簡単にご紹介しますと


Cメジャースケールに対して、Cマイナースケールの音を

借りてきてもいいんじゃないか

という理論です
B♭というコードでしたら、C(トニック)に続く形として使われるので

Ⅶ♭→Ⅰ


という形ですが、今回はさらにその中でも F の代理コードのような形で使っているので「ラ」が増えています。そこで
Fの構成音→

【ファラ】ド

に対してB♭7の構成音


シ♭レ【ファラ】


【】でくくった部分【ファ・ラ】が音程として被っています
なので別のコードですが代理として使ってしまえ、といった具合です

代理コード自体がこのような考えに基づいたものです

具体的に知りたい方は調べてみてください。

と、理論の話ばかりなのでノウハウや感覚的な話に戻ります

僕としてはこの音程のチョイスは「Bフレーズ頭のドの音」に対して全音上の「レの音をだしたい」という直感からきています
全音上ですのでインターバルで考えると長2度となります。


繰り返していた牧場のドラマの中に明るい兆し

このアクセントにピッタリだと判断し、まずはメロディをメイキング
そしてその後代理も含め使えるコードの中から選抜しB♭7に決定しました

メロはこんな感じです

のどかな草原_Flute6

長く音を伸ばす事、最高音を使う事を意識しつつコードでアクセントを噛ましています。

そしてラストなのですがこちらは「ドミナントマイナー」という名前が付いたコードワークとなっています
内容としましては

メジャースケールにおけるⅤの音を無理やりマイナー化して使ってしまえ!

といった具合です。

草原のどかな_NylonGtr5

31小節目からコード進行は

Gm7/Am7/F/F

となります。

このGm7は本来G7です

このように、ドミナント(Ⅴ)をマイナー化して使うことを
ドミナントマイナーと呼びます

このようなアレンジを施すときの感覚的な面ですが
自分は無理に使っていこう、理論を知っていて変えてみよう程度の気持ちでは使いません

コードのアプローチとしての明確な目的意識または「変えたい」であり「変えてみよう」ではありません

変えてしまうことによってテーマがブレる
音楽的には華やかでもテーマの持つストーリー性とはかけ離れてしまうことは起こりえます

なので、自分の感覚/感性を信じたうえで、「何かに進行を変えたい」と思ったとき。コードワークに着目したならばそのタイミングで学べばよいです。

そしてこちらがエンディングのメロディライン

のどかな草原_Flute7


のどかな草原というテーマの中ですが
きっとストーリーを感じることができたと思います。

BGMだから、「のどかな」だからなどの理由で
音楽的展開を持たせないという結論には至りません
エンターテイメントとしての目標は「リスナーを楽しませること」
そして作曲家としては「音と向き合って感じさせ方をコントロールする」
そして音楽家としては「全体のストーリーを考えて、曲の最大を限活かす」
事だと思います

それに加え「ゲームサウンドのクリエイター」として一言付け足せば

映像が主役であり、それは歌曲における伴奏がVocalを引き立てるような関係性に似ていると言えます。すべてのインスト(器楽音)は映像の為であり
その映像の在り方によってさまざまな音のスタイルが決まってきます

しかし時には「イメージと反対のテーマや音」を使ってみたりするなど
むしろ「同じ方向性の音で塗り固めたり」など
様々なアイデアとイメージ力が問われると思います

受け売りですが「自分が感動できるライン」は必ず踏みつつ
「根本的にどの視点から映像を見せるか確実にコントロールできる」

のが「ゲームサウンド」しいては「映像につくすべての音楽」に
いえることでしょう

最後に楽曲の完成形をお聴きください



エフェクト使いやCCパラメータの調整については番外編を講じることがあれば記事にしようと思います。
もちろん「草原」×「のどかな」というテーマに基づいた解説です。



さてさて


理論などの登場も含め中級者向けの記事となってしまいましたが
いかがだったでしょうか、次回からも様々なテーマやシチュエーションを扱っていこうと思っています。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
次回も、お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?