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鬼滅の刃23巻の売れ方がどんだけヤバいか可視化してみた

鬼滅の23巻どっこも置いてないじゃんかー!!

と、お嘆きの皆さんにごめんなさいするお話、ではあるんですけれども、今回は本当に、ちょっといろんな意味で想定外だったんです。

自分のところのデータを、数字は出せませんがグラフくらいならというところでちょっと軽く作ってみました。

まずですね、通常版の21巻以降の発売初日の入荷と発売日当日のみの販売を棒グラフにしたものを見ていただきます。

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初めてアッポーペンを使ってみたよ(どうでもいい話)

コミックの単行本の初版のセオリーというのがあって、10巻以上のある程度巻数の伸びてる作品っていうのは、徐々に発売1ヶ月とかの販売数は微減を重ねていくので、細かく部数を刻みながら減らしていくというのが慣例に近いと言ってもいいと思います。ある程度部数があって、前の巻と初版は同数もしくは増部ということであれば相当勢いのある作品ということです。

それでグラフに戻ります。

発売日は全て金曜日になりますが、まずは21巻から22巻の入荷と販売を見てください。

22巻は仕入れは増えていますが、それに対しての販売数の初日対比はやや減っています。これは先程のセオリーに沿って考えれば至極自然な流れなので、まぁそうだよねと思うわけです。ところが今回、映画公開後の既刊の売れ方の伸びが想定外だったこともあり、23巻はどう足掻いても微減どころかある程度は増えるであろうという推察はできました。

しかし、しかしですよ。言うても120%くらいでしょ完結巻の時に跳ねるにしても(直近のジャンプ作品の完結作品の初動データ参照した雑感)と思っていたのが200%以上の伸びになりました。こんなん予測できませんわ。

もう一つ。特装版の方も数字を見てみましょうか。こちらについては少し前置きをさせていただきます。21巻の特装版は委託扱い、つまりお店で売り切ることができなかった場合に出版社に返本をすることが可能です。22巻と23巻は買切扱い、つまり一度仕入れたら返本ができません。さらに22巻と23巻は受注生産品になるので追加発注も不可、読者の予約可能期間は原則6月18日までで、その日以降で書店が受け付けてくれている場合は、余らせて売れずに丸々損になってしまうかもしれないリスクを背負って余分に発注していたお店です。

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正直な話、23巻は年内のうちに少しずつ捌けてくれれればいいかなくらいに考えてある程度店頭分を考慮して発注をしていたのですが、2000円の22巻よりも2.5倍以上も値段のする23巻の方が初速が上(入荷数は22巻と比べて少ないのに)と言うのがまずもってして意味がわからないです。発売前日までに予約で満了してしまう入荷数では無い程度には十分な数であったはずなのですが、それでも一部店舗では予約で埋まってしまっていて、完全に想定外です。

なお、この特装版(買切)の発注に対するスタンスについては書店によって大きく異なります。前述の読者予約締切日までの予約数しか発注せず、その後は一切受付不可としているところもありますし、自分のところみたいにダバダバに博打の如く発注するところもあります。特に今回は高額ですので、より顕著に出ていると思います。

これらを踏まえて、これまで事前に出ていた初版の数を確認してみましょう。

21巻:300万部、22巻:370万部、23巻:395万部

23巻の部数の積み上げがやや少ないのでは?と数字だけ見ると思うかもしれませんが、通常版の話でも少し触れましたが、21巻と22巻の初動対比を比べるとこの初版の推移自体に特に違和感を感じることは無く、完結巻なのに積み増すことのほうがむしろ思い切っていると捉えた方がいいと私は思っています。

グラフ自体の目盛もなんとなく初版のプラス幅と似たような感じですよね。

この後の重版も幾度となくされると思いますが、単純計算だと23巻だけで積算800万部、ただこれはちょっと飛躍しすぎなので現実的には個人的にはおそらく600万部は最低必要条件なのかなと思います。そして、当面は「鬼滅の刃」全23巻で総発行部数1億5000万部まで引き上げるところがひとつの目標なのかなぁというのを勝手に想像しています。

それで、です。最初に戻りますが、

鬼滅の23巻どっこも置いてないじゃんかー!!

って話、実はいうともうすでに重版が決まってまして、時期は明言しませんが(転売屋対策)普段の最速重版タイミングよりもさらに早いタイミングに見えるのですが、おそらく最終巻の部数を決めるタイミングと映画公開のタイミングがほぼ同じタイミングで、映画公開後にコミックの売り上げが再爆発、その後の23巻初版部数の上乗せ、修正が年末進行もあって間に合わず、いわゆる発売前重版のような形になっているのではないかと思われます(あくまで書いてる人の推察です)。

ですので、今回のこの発売日直後の商品不足については色々な要素が重なってこういう状態になっているというのは、是非ともご承知いただけると幸いです。

既刊も含めて、集英社さんがこの年末のかなりやりくりが難しいスケジュールの中、鬼滅の重版の予定を滑り込ませまくってます。少しでも早く安定供給できるように頑張ってらっしゃいますので、年末、そして来年に向けて作品を応援していけたらいいなと思っとります!

このやばい状況で、さらに呪術廻戦も大変なことになっているので、集英社の営業部署のジャンプ担当さんの胃が、ストレスで穴が開いてしまうのではと心配で仕方のない今日この頃です。

それから、こういう状況ですので、大多数のお店でまだまだ鬼滅の刃が新刊・既刊・外伝等関連商品が店頭で見当たらない、買えないという状況が続くと思われます。お子さんへのプレゼント探しなどで気が立ってらっしゃる親御さんに詰問されて困った等の愚痴を聞いたりもしていて「一昔前の妖怪ウォッチのメダル付きの本のトラブル思い出したわ」というくらいの状況です。是非とも店舗にお尋ねいただく際には穏やかにご対応いただけると、スタッフとしても落ち着いてご対応差し上げることができると思いますので、その点につきましても、ひらにご容赦いただければ、というお願いでこの話を締めさせていただきます。

萌特化書店(仮)で商品部バイヤーとしてコミックの施策担当を生業にせし書店員。リアルジョブは書店名を隠してますが同上コミックバイヤーです。コミックラノベ方面の話題に絡んだ話とかたまにします。