創作脚本吉山賞の戯曲集ではない理由
兵庫県の高校演劇には「創作脚本吉山賞」(以下「吉山賞」)という創作脚本賞があります。
しかし、『GIKYOKU!』は吉山賞の戯曲集にはしませんでした。
元々は吉山賞の戯曲集をつくりたい想いがあったのですが、最終的にそうしなかった理由を書いておきたいと思います。
創作脚本吉山賞とは?
簡単にいうと兵庫県大会における創作脚本賞です。
全国大会の創設にも関わられた故・吉山芳良先生のご寄付を元に、書き手の育成を目的として創設された賞です。
その吉山賞には(おそらく)他府県の創作脚本賞と違ったユニークな点があります。
新人賞であること
生徒も顧問も、受賞の機会は一回限りとされています。
つまり、一度受賞した生徒・顧問は、選考対象外となります。
例えば、籔先生は2016年に『アルプススタンドのはしの方』で吉山賞を受賞しており、以降の作品は選考対象外となっています。
『旅立ちの日に』は生徒原案による合作なのですが、籔先生の作品ということで選考対象外だったようです(ただし、同作は近畿劇作連絡会による近畿優秀創作脚本賞・最優秀賞を受賞しています)。
生徒創作でいうと『湖上の蟬』もまた、選考対象外でした。
これは中村さんが高1のときに『逆光』という作品で同賞を受賞していたためです。
各支部より推薦された作品が選考対象であること
ここが少し吉山賞のわかりづらいところです。
他府県の創作脚本賞ですと、おそらく県大会・府大会での上演作が選考対象になっているのだと思います(すみません、あまり詳しくは知りません)。
しかし吉山賞は、各支部より推薦された作品により選考されるので、県大会上演作=吉山賞選考作品という訳ではありません。各支部より上演作として県大会へ推薦される作品と吉山賞へ推薦される作品が違うということはしばしば起こります。
『晴れの日、曇り通り雨』は、全国大会において創作脚本賞を受賞していますが、吉山賞は未受賞です。これは、阪神支部より推薦されなかったため、選考対象になってなかったようです。
ただし、これは良い部分でもあります。
県大会へ上がれなくても、戯曲が優れていれば吉山賞の選考対象になり得るのです。
前出の『逆光』も県大会での上演はありませんでした。
ちなみに、吉山賞の選考作品は、公開されていません。受賞によって「ああ、そうだったんだ」とわかるのみです。
吉山賞の戯曲集では取りこぼす作品がある
私は個人的に吉山賞はとても素晴らしい賞だと感じています。
その賞を受賞した作品は「読んでみたい」と常々思っていました。それが当初、吉山賞の戯曲集をつくりたかった理由です。上にも少し書きましたが、支部より吉山賞へ推薦された作品が上演作と異なる場合、その作品が吉山賞を受賞しても、どのような作品か知る由がないからです(支部大会で観ている場合を除く)。
しかし、『GIKYOKU!』では、吉山賞とは違った基準で作品を収集しようと思いました。
吉山賞を受賞した作品はどれも素晴らしい作品に違いありませんが、だからといってそれ以外の作品が負けているわけではないからです。
また、受賞作家のそれ以外の作品も見て欲しい思いもありました。
籔先生の『アルプススタンドのはしの方』は、全国大会で最優秀賞を獲り、その後プロによる上演や映画化など、高校演劇界を席巻しました。けれども、他にも素晴らしい作品を書かれています。
『GIKYOKU! Vol.1』に収録した『ゲームオーバー』も私は大好きですし、何より「スゴイな!」と思ったのです。私には書けません。
コンクール外でも凄い作品がある
兵庫県ではコンクール外でも創作脚本を書くことは盛んです。
その根幹には、故・吉山先生らの活動があったのでしょう。吉山賞は確かに新しい書き手を育んでいるのです。
コンクールでは不可能な60分を超える作品や、その年の県大会最優秀賞受賞作よりも凄いと感じた作品もあります。
私たちはコンクールだから特別に作品をつくっている訳ではありません。
上演機会があれば、いつだって全力で作品づくりに挑むのです。
中でも戯曲を書くことは容易ではありません。
良い作品を書こうと思っても、なかなか書けるものではありません。タイミングが熟したときに、はじめて作品として書けるような気もします。
何より書いた者ならわかりますが、書き終えるのも難しいのです。
Vol.2以降では、そういった作品も採り上げていきたいと思っています。
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