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他の人とのモノや場の共有が楽しい時代になってきた

関内を拠点に活動するさまざまな分野の人たちが結集して2019年にオープンしたシェアオフィス「G Innovation Hub YOKOHAMA」株式会社オンデザインパートナーズの代表・西田司さんは設計メンバーの一人です。Gの特長ともいえる人と人のつながりを生み出しながらも開放的な空間はどのようにして作られたのか。活動拠点にしている関内の魅力、そしてそのまちの中にあるGへの思いとは―。西田さんに聞きました。

ちょっとした仕事を頼みあえる「近所付き合い」の魅力


歴史的建造物を暫定的に使用した文化芸術拠点「北仲ブリック&北仲ホワイト」が2005年に馬車道駅付近にオープンしました。この地域の相場の3分の1程度という破格の家賃に惹かれて、横浜駅東口にあった事務所をそこへ移したのが関内に来たきっかけです。建築家や芸術家など約50組のクリエイターのオフィスやアトリエが入っていましたが、ちょっとした仕事を頼みあえる雰囲気で「こういう近所付き合いっていいな」と思いましたね。1年半で一斉に退去することになりましたが、その時の縁もあって、転々と動きながらもずっと関内を離れずにいます。

近所付き合い盛んな関内周辺の魅力を語る西田さん

街の人が無理なくできる貢献をして桜通りをよい街に


今の事務所は関内桜通り沿いで6年目ですが、この通りは振興会を中心に地元を盛り上げていきたい機運が高いんです。桜を見る会を開いたり、コロナ禍には車道の一部を封鎖してテラス席を設けて地元飲食店のテイクアウトを楽しむ催しをしたり。そういうのを地域でやっているのはとても良いじゃないですか。オンデザインからも若手スタッフを何人か手伝いに出していたら、いつしか会議のレギュラーメンバーになっていて…。そんなことから今年、関内桜通り振興会の会長になりました。
仕事で他のまちを見る機会がありますが、一人が頑張っているようなところはダメなんですよ。いろんな人がその人なりに寄与しているところがうまくいっている。だから地域の人たちがそれぞれやっている中に「オンデザインもこんな役割があるよね」という状態を作って、良いまちになったらいいなと思います。

今求められているのは“玄関のドア開けっぱなしの田舎感”


フレームだけで囲まれたGの代名詞ともいえるセミオープンブース


Gが完成したのは2019年6月、新型コロナが流行し始める半年ほど前ですね。関内のシェアオフィスの先駆けであるmass×mass・治田友香さんの「これからのオフィスは閉じるばかりではない。半開きぐらいがちょうどいい」という言葉から着想を得て、フレームだけで囲まれている個人のスペースという、人気の「セミオープンブース」の設計につながりました。
自分はもともと「閉じていたほうが…」と考えるタイプでしたが、分析してみるとシェアオフィスを利用する人の多くは自宅も働く場所としてカウントしているんです。だから1人になるとか、ウェブ会議をやるなら自宅で良い。その上で別の空間が必要になった時は、出会いというか、リアルな交流が求められているんじゃないかな…と。
Gは交流会もあるし、Gに立ち寄ったり共有スペースでくつろいでいると、スタッフや入居者が「コーヒー飲みます?」みたいに気楽な感じじゃないですか。コロナ禍を経てオンラインミーティングが当たり前になった今だからこそ、隣近所に「醤油貸して」と行くような“玄関のドア開けっぱなしの田舎感”が、一周回って求められている感じがします。半開きのGは横浜という大都市の中の田舎かもしれないですね (笑)。



道路にテラス席を設置し近くの飲食店のテイクアウトを利用できるようにしたイベント「かんないテラス」。コロナ禍の飲食店を応援しようと地域一丸となって企画を作り上げた。


Gも関内も「おたがいさまの空気がとても良い」


オンデザインの事務所のイッカイにフラっと訪ねて来る関内の人はたびたびいますし、Gも飛び込みで見学に来る人が多いですよね。Gにも関内にもおたがいさまの空気があるのがすごく良いと思います。
建築でもそうだけど、所有欲求が高まりすぎると相手との間に壁を作ることがあるんです。壁があると自分の持ち物にしか興味を持たなくなるんですよ。今は一人でたくさんのものを持っているより、「他の人と共有したほうが楽しくない?」っていう時代。となると、まちの中もそうなったほうが良いですよね。「このビルはこの人の物、この建物はこの人が管理人」っていうだけじゃない、いい混ざり合いがもうちょっと起こりそうだなと思って、地域への貢献も楽しんでいます。

関内のおすすめのお店…

「the bar tenmer」
オンデザインの向かいにあるルーフトップバー。屋外なので、寒い12月~3月はお休みです。お酒は全く飲まないけど、ルーフトップが超おすすめ!

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