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自分も起業してわかった、ベンチャー社長の孤独と情熱、だからマネージャー業はやりがいがある

ベンチャー企業の事業拡大に向けた情報提供や大企業との事業連携プロジェクトの創出などに取り組む神奈川県のベンチャー企業成長促進拠点「SHINみなとみらい」。コミュニティマネージャーを務める工藤春香さんは、1社1社と丁寧に向き合ってベンチャー企業の新たな挑戦を後押ししています。「挑戦し続ける企業がたくさんこの地に根を張ってほしい」。そのマインドはG Innovation Hub YOKOHAMAと同じです。ベンチャー企業などへの思いを聞きました。

頭を抱えたコロナ禍、知名度なし、繋がりなしの門出―


以前は商社に勤務して、早朝から深夜まで働く生活でした。都内のシェアハウスに住んでいましたが、心が死んでいる感じで周囲からも心配されて。そんな様子を見たシェアハウスの運営者が「神奈川県が立ち上げようとしているベンチャー企業の支援拠点に提案書を出そうと思うから一緒にやらないか」と誘ってくれたんです。提案が通るのかも仕事になるのかも分からないので清水の舞台から飛び降りる気持ちで一緒に提案書を作って応募しました。そして運営を任されたのが「SHINみなとみらい(以下SHIN)」です。

WeWorkオーシャンゲートみなとみらい内に拠点を持つSHINみなとみらい

2020年の4月にオープンしましたが、翌月には緊急事態宣言が出されてクローズになりました。コロナ禍だし、知名度もないし、運営メンバーにもしかるべきつながりがない中でどう盛り上げていけばいいか分からず、とりあえず起業している知り合いに泥臭くSHINのことを紹介して。次の一手にしたのが、オンラインのマッチングイベントです。県の重点施策を考慮してヘルスケアや多文化共生分野のベンチャーに特化したものを開催しました。そこから少しずつ「SHINってマッチングなどをやっているんだ」、そもそも「県のベンチャー支援拠点があるんだ」と口コミなどで広まって、「行ってみようかな」という流れができました。当初の予定にはなかったオンライン上の交流ですが、現在も積極的に活用しています。
SHINのコミュニティマネージャーとして意識しているのは話をじっくり聞いてマッチングしたり、ビジネスコンテスト等への応募機会につなげたりすること。システム開発系の会社とウェルビーイング系の会社など、一見切り口の異なる事業をしている会社でも互いのシナジーにつながるものを考えて引き合わせることで事業提携につながりましたし、企業の特長に合ったビジネスコンテスト等を紹介することで見事に受賞した事例もありました。
私は自分が目立つよりも、頑張っている人が成功していくことに幸せを感じる瞬間がこの仕事をする以前からあって。今こうして各社の話を聞いて応援する立場になり、とても楽しいし、やりがいを感じる毎日です。

常に孤独で戦っているベンチャー企業の社長にとってGは理想的な活動拠点


 GのことはSHINの利用者が紹介してくれました。以来、SHINの運営メンバーも定期的に足を運んでいますし、プログラムを終えた後の入居場所として紹介したりもしています。Gは登記もできるし、デスクをもつこともできる。ワンフロアがまちのようになっていて、コーヒーを片手に自然と会話が生まれるような設計やスタッフが駐在して人のつながりを作れる運営体制もありますよね。しゃべりたい時、一人で仕事に集中したい時、どちらにも対応できる場はなかなか他にはないと思います。ベンチャーの社長は常に孤独で、常に戦いなので相談できる人が身近にいたほうがいいと思うんです。Gにはベンチャーのみならず多種多様な企業が入居しているので、いろんな人に相談ができてスタートアップを後押しする雰囲気があります。「しかるべき拠点をもって神奈川で活動してほしい」と思っている私たちとしては安心して紹介できる場です。「ライバル関係では?」と言われることもありますが、むしろ同じ方向を向く仲間という感じですね。

起業する立場になって実感したベンチャー企業の孤独感や不安感、そして情熱


起業への思いを語る工藤さん


昨年、SHINで出会った3人とともにセンシング技術開発の会社「SHIN4NY」を立ち上げました。メンバーの2人はモノづくりに没頭していたいタイプのエンジニアで、もう1人はアイデアマン。SHINでそれぞれのアイデアをぶつけ合っていたら、「ぶつけ合うより、やったほうが早い」という話になって、代表に指名されたんです。誰かが指揮をとらないとせっかくのアイデアが世に出ていかないし、そういった状況はもどかしい。これまでのつながりを生かして適切なところに案内して世に出していくことが自分にできることだと思ったので引き受けました。
実際に起業して今までいかに自分が安全圏からものを見ていたかというのを感じましたね。いきなり売り上げは立たないし、仲間がいても最終的には自分でなんとかしないといけないので孤独。資金が徐々に減っていく怖さもありました。リスクをとってまでやりたいことを信じてやっているベンチャー企業を心から尊敬しましたね。ベンチャー企業の多くは4年ほどで廃業というデータもありますが、SHINから巣立った企業もどうか幸せで元気にやっていてほしいと思います。
また、紹介もすればいいというものでもないことも実感しました。多忙な中で、紹介された人に会うだけでも貴重な時間を奪うことになります。本当に相手が求めていることに沿わないと、よかれと思った紹介が余計なものになってしまう。当たり前のことですが、改めてそれを意識するようになりました。
運営者の立場なのに起業をしたことでSHINを自分のプラスのために利用したように思われるのではないかという引け目もあったんです。でも利用者から「そんなこと言わずに会社のことを教えてほしい」とか「ようこそこっちの世界へ」と言ってもらえて嬉しかったです。ベンチャー側が求めていることへの理解も深まりましたし、自分が起業する側に立って良かったと思います。

自分たちも楽しんで、地域も盛り上げる関内の祭りにかける熱意に驚き


普段はみなとみらいエリアを拠点に仕事をしていますが、まちづくりプロジェクト「横浜をつなげる30人」に参加したことで、他の地域にもより近づく機会が増えました。みなとみらいと隣り合った関内エリアには日ごろGへの訪問などで足を運んでいますが、近いのにまち並みや人の雰囲気が大きく違うので面白いですよね。関内でとても驚いたのは「お祭りに全力なこと」です(笑)。関内まちづくり振興会の方々と話す機会も増えて、横浜をつなげる30人として「関内さくらまつり」に参加しましたが、心から楽しいと感じましたね。運営の人も楽しみながらマイクを回していたし、楽しみながら警備もしていて。大企業のオフィスが集まるみなとみらいは、企業同士のつながりはありますが、地域のお祭りとなると“会社の顔”が見える感じで個人の顔はあまり見えないんです。関内は人の顔が見えますし、それぞれが「自分たちも楽しみたい、より良く関内を盛り上げたい」という思いでやっているのがとても良かったです。

関内のおすすめのお店…
Gから徒歩4分ほどのビルの中にあるシーシャカフェバー「みなとみらいシーシャAnchor Knot」
開けた空間で心地いい音楽が流れる、静かで落ち着いた場所。以前は友人と行ったけど、今度は一人で行ってみたい。ぜひみんなにも行ってみてほしい!


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