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ソフトウェアで社会課題を解決へー。日本初の面会交流アプリは“子どもの権利”を守りたい思いから生まれた

 総務省などが今年3月に開いた「起業家万博」に関東代表として登壇した境領太さんは、G Innovation Hub YOKOHAMAの入居者のひとり。離婚後に子どもを養育する夫婦が直面しがちな「面会交流」の課題に目をつけ、専用アプリ「raeru(ラエル)」を開発しました。自身に離婚経験はない境さん。だからこそ、父母どちらかに偏ることなく中立な立場で子どものためのサービスを考えられると言います。目指しているのは「離婚後の子育てをみんなで支える社会インフラの構築」。その一歩を踏み出した境さんに話を聞きました。


感情的になりがちな離婚後の両親のコミュニケーションを定型文で円滑に


 大学卒業後、IT企業でSEなどをしていましたが、ソフトウェアで社会課題を解決したいという思いが強くなり、2021年にGUGEN Software合同会社を立ち上げました(23年に株式会社化)。この先何十年と継続できる事業を模索する中で、離婚を経験した知人から「面会交流」の問題について聞く機会がありました。面会交流は離婚後、子を監護していない方の親が子どもと交流することですが、そのために離婚した相手とLINEやメールでやりとりをするのがとてもしんどいという話を聞いて、その負担を軽減するアプリを作ろうと考えました。
 毎年80万人が出生する一方で、年20万人の子どもは両親が離婚しています。そしてひとり親家庭の半数は、経済的に苦しい状況です。子どもの問題は日本の将来の問題でもあるので、すべての子どもを笑顔にしたいですし、離婚=かわいそうという現状のイメージを変えたいと思いました。実際、毎日喧嘩していた両親が離婚したことで勉強に集中できるようになったとか、離婚は子どもにとって悪いことではない場合もあります。「親の離婚と親子の繋がりは関係ないんだよ」とみんなが言えるようにしていきたいです。
 そんな思いで2022年8月にリリースしたのが面会交流アプリ「raeru」です。離婚後の子どもにとって経済的側面を支える「養育費」と、情緒的側面に関わる「面会交流」の2つは大切ですが、日本の養育費受給率は28%、面会交流は30%程度しかできていないのが現状です。これらは子どもの権利にも関わらず、多くの場合、離婚した父母のコミュニケーションが難しいという理由でできていません。両親が「raeru」を使えば、定型文だけで感情的にならずにやりとりができます。

raeru開発への思いを語る境さん

サービスを始めて一番驚いたのは、一般的な離婚した親子の養育費受給率や面会交流が30%程度であるのに対して「raeru」のユーザーへの調査では、いずれも80%以上だったことです。父母のコミュニケーションをアプリでサポートすることの重要性を感じました。
 ユーザーさんから伺った話ですが、幼稚園に通うお子さんが友達から父親のことを聞かれた時に口ごもってしまって悔しい思いをしていたそうなんです。遠距離に住む父親と「raeru」を通じてオンラインで面会交流を始めて、最初は緊張や怖さもあって15分の面会がやっとだったのが、半年以上経った今では1時間話した後にもう1回話したいと言うほどになったと聞きました。再び父親について聞かれた際には自信をもって答えられたそうで、この話を聞いた時にやってよかったなと思いましたね。
 

仕事は個室、息抜きは広いリビングスペースで。気分転換できるGは僕にちょうど良い

コーヒーを淹れるひとときが仕事の息抜きにもなる大切な時間

 昨年7月、横須賀市のスタートアップオーディションで最高評価と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)賞をいただきました。それによって今年3月、総務省とNICTが開催する「起業家万博」に関東代表として登壇することになったんです。ICTを活用した全国各地のスタートアップが事業について発表する場で、離婚後の子育ての現状を知らない人たちにそういう課題があるんだということを知ってもらうだけでもすごく意味があると思ったので、気負わずに話をしてきました。
 Gに入居したのは横須賀のオーディションを終えた後ですね。コロナも落ち着いてきて人と会う機会もありますし、他のソフトウエア開発の仕事でも個人情報を扱うので個室のオフィスが欲しくなって。Gはくつろいだりお客さんを呼んだりできる共用部が広いので、ワンルームでは息が詰まりそうだと感じていた僕にちょうど良いと感じました。今はほぼ毎日Gにいて、エンジニアと一緒に作業をすることもあります。僕はコーヒーが好きなので、挽きたてのコーヒーが飲めるGはとても快適です。淹れている時に人と交流できるのも良いですし、コーヒーを飲みながらスタッフと雑談して息抜きもできています。司法書士の入居者さんから弁護士を紹介してもらったり、エンジニアをしている入居者さんに技術的な相談をしたり、Gの中のつながりも活用しています。

関内周辺のおすすめのスポット…「南蛮屋」
2週間に1回は行くおすすめのお店。コーヒー豆を200g以上買うとその場でコーヒーを1杯飲めるのが良い。特にランチ後に外で飲むコーヒーはめちゃくちゃおいしくて、ラッキーな気分に!


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