「りんご時代」のお話
会社でりんごをいただいた。
サイズは私の顔の半分ぐらい。
皮が美味しそうなルビー色をしていて、とてもつやのある素敵なりんごだった。
早速お昼にいただこうと思い、きれいに洗った後かぶりついたが、何人かの同僚に不思議な目で見られ、「あぁ、ここは丸かじりの習慣がなかったんだった」と、一人で会議室でひっそりと味わうことにした。
とはいえ、なんと大きなりんごだろう。
食べ進めれば進むほど、顔が果肉に埋まっていくようで、いつの間にか頬は蜜だらけになっていた。
ティッシュで顔を拭く。
手をつたって腕まで滴っていた汁を拭く。
我ながらなんとだらしない食べ方だと考えつつも、やはりりんごはこうやって食べた方が一番美味しいのだからしょうがないとも思っていた。
中学の頃。
おやつはほとんどりんごを食べていたような気がする。
私は中国の南部地方にある、とある山奥の全寮制学校に通っていた。
週末を除いては学校から外に出てはいけない決まりだったので、普段からおやつなどを買うことがあまり出来なかったが、その代り昼休みには果物が支給された。
洗濯物かごのような入れ物に、りんごがいっぱい盛られて各クラスに配られた。
切ってもらえることはなく、かといって自分達で切ることも出来なかった(そもそもナイフが無かった)ので、水道で洗ってそのまま食べるのが普通だった。
ぽたぽた汁をたらしながら食べたので、教室の床はあっという間にベタベタになるので、毎日の掃除が大変だったのを覚えている。
その他の果物もあった気がするが、圧倒的にりんごが多かったせいかもう思い出せない。
よって、中学のおやつの記憶は、もうただただりんご、りんご、りんごなのだ。
高校に上がってからも、この習慣が抜けなかったせいか、しばらくは家からりんごを持って学校に通っていた。
昼食後、スナック菓子を食べる子達の中で、自分だけがシャリシャリとりんごをほおばっていた。
その後はりんごに限らず、人参やきゅうりもおやつに持っていったっけ。
振り返ってみると、本当に健康的な食生活をしてきたものだ。
なのに今はすっかり人工添加物の犠牲者になってしまった。
保存料、着色料、防腐剤に人工甘味料……
分かっている、身体に悪い。
分かっちゃいる。
けど、やめられない。
りんご1個だけで十分満足出来た、あの頃の自分にはもう戻れないのだろうか。
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