毒展
お正月、国立科学博物館(東京・上野公園)の毒展に行ってきた。
この日、毒展を回りながら敢えて長男が知っていることを色々話してもらおうと思っていた。長男は自分からはわざわざ知っていることを披露してこないが、親が見ていて物知りの片鱗は感じていたため、ぜひこの機会に私も色々と長男の知っていることを聞いてみたいと思っていた。
長男と話していると、こちらの理解力が原因で、聞いた内容の半分も再現できないことがある。過去に私自身が産休に入るたびに通訳学校に通って訓練していた経験からも、理解した情報は保持できて再出力も可能だが、最初の理解がおぼつかないとコトバとして聞こえているだけで内容が残らないことを痛感していた。
これが長男と母国語で会話していても起きてしまう。改めて長男を尊敬するとともに、私の頭に残せないのが残念だと思うのだった。以下、毒展での長男との会話を少し書いてみようと思う。もう行った日から10日も経ってしまったため、どういう順番で話したかや、詳細は思い出せないことも多い。
展示物の中にはいくつか巨大模型があって、このイラガもその一つだった。長男が、「台風の時は気を付けないと大量に飛んできて刺されることがあるよ」と言っていた。
蜂のセクションもあった。長男が「キラービーって聞いたことある?人間が人工的に作った蜂なんだけど、凶暴で、実は失敗から生まれたんだよ。」と言っていた。そんな蜂がいたのかと、なんで失敗したの?と訊いたら、「交配結果の予測を間違えたんだろうね」と言っていた。
知らなかったが、毒を持つ鳥もいるそうだ。長男が「こういう鳥をまとめてピトフーイって言うんだよ」と教えてくれた。聞きなれない言葉に「なんだって?」と何度か聞き返してしまった。10日経って、「ピフトーイなんて良く知ってたよね、人生で使う機会ないかもしれない言葉が瞬時に出るってすごいと思う」と私が言うと、「ピトフーイね」と訂正された。
トリカブトを見た時は、「トリカブト食べたら、すぐフグ毒食べれば助かるかも。」と言った。苦しみが増すだけだろうと思ったが、長男曰く、ナトリウムチャンネルをブロックする毒と逆の作用をする毒とがあって、アルカロイドがどうのと言っていた。お互いの毒がうまく打ち消しあえば可能かもしれないということらしい。しかし時間や量を完璧に調整するのは難しそうだと言っていた。
アカエイについては、尾棘(びきょく)の構造について説明してくれた上で、水族館では切られていることもあると言っていた。私には不思議で仕方がないのだが、長男は「尾棘」という普段使わない言葉もすぐに出てくる。遠くからエイが見えたら、毒展でエイなら「尾棘」は自然のようだった。
カツオノエボシというクラゲのホルマリン漬けを見た時は、「これ本当は青いはずなんだよね」と言っていた。そうしたらすぐ近くのスクリーンに生きた状態が映し出されていて青い色をしていた。よく知っているなと思う。私は知らなかった。夫がすかさず「烏帽子(えぼし)」と関連付けて話をしてくれていた。
後日初詣に行って、夫が「ほらあれが烏帽子だよ」と次男に話していて、私には「毒展でクラゲいたでしょ?」と振ってきたが、その時はもう記憶から消えていた。このnoteを書くために改めて毒展の写真を見てようやく思い出した。この記憶力の違いはすさまじい。
蛇についても、牙のついている位置の違いだとか、色々説明してくれた。途中でICレコーダーを持って行かなかったことを後悔した。ここに書き出せる内容は私の記憶に留めることのできた極基本的なことに限られると思う。さらには内容の正しさには責任を負えそうにないことを最後に記しておこうと思う。