四苦八苦のアルバイト(終)
桃源郷の一時
社員Yさんと私のその後のお話です。前回触れたゲームの技である「やみどうこく(お別れです)」をYさんからされてしまいました。
急な接吻、そして足を絡めてきたり段々ヤバい雰囲気になってきました。
(どうしたんだこの人、酔っ払ってるのか!?)
Yさん「ねえ、智聖くん、可愛いよねえ。」
「今日、とてもかっこいいよ。」
(おいおい、何か様子がおかしいぞ。)
今度は、首元にキスマークを付けてました。初めての経験で衝撃が走りました(当時は何をされているかわからず。)
「Yさん、あのチーフとお付き合いされてますよね?」
「マズイですよ。俺みたいなガキよりダンディじゃないですか。」
すると、焦らし目?のような感じでため息を付いてきました。
Yさん「いや、あの人とはもう終わってるから。異動したし、他人よ。」
実は、Yさんは入社して2年目らしいです。酔っ払ってるので、全部聞き取れませんでしたが、研修店で入った40代のチーフ(既婚者)から猛アタックされて、不倫未遂になってから失恋していたとか。2年目になる直前に、今の店舗へ異動で来たようです。
Yさんは、ロリ系で今で言うメイドとかアイドル系に人気が出そうな外見でした。小柄なので、確かにおじさん受けはさらに良いかと思います。私服は、真逆な感じでギャルぽい格好だったのを覚えています。
すると、お付き合いされてたチーフさんから口説かれたようで、既婚者ではなかったことで、受け入れてたと。さらにバツイチの30代後半だったと教えてくれました。Yさん曰く、再婚は考えていない人で、先が元々見えてなかったようです。
すると、メソメソ泣き始めてお酒のせいか、色々と本音をはいていました。
Yさん「自分は、見る目がない。男運が悪い。」
自分の恋愛にうんざりしていた様子でした。
後日談で書く予定ですが、当時私も大失恋していた頃で、それ以前にも紹介された異性とも上手く行かなかった。正直ゲンナリしていた頃でした。(後に占いで言う天中殺の時期が判明します)
まぁ、大抵の大人はそんなYさんを口説いてそのままホテルなり、どこかへ連れてって深い関係になれてたかもしれません。
当時の私は、そんな野心もありませんし、ただ単に泣いている女性の話を聞くだけで精一杯でした。
Yさん「智聖くん、今だけあたしの彼氏になって。」
「お店が閉店するまで、抱きしめてくれる?」
そう、シクシク泣いている彼女を抱きしめました。
すると、どうでしょう。彼女は段々とこっくりしながら寝てしまいました。私も次の日学校でしたので、仮眠を取らないといけないと感じて朝5時までそのまま目をつぶりました。
確か4~5時間だったと思いますが、半日ぐらい長さを感じざる得ませんでした。まさに精神の時の部屋でしたね。
※精神の時の部屋とは、ドラゴンボールに出てくる神様の施設。外での24時間が中では、1年経過する異次元空間。
朝5時になりまして、最寄り駅までYさんを見送る。急いで家に帰宅しました。シャワーを浴びて1時間仮眠した後は、そのまま学校です。あれだけ眠かったは後にも先にもありませんでしたね笑
今でも覚えていますが、その日は生徒会の学園祭の会議があったので、夕方6時まで残ってました。会長がいい人で事情を話したら、会長室に案内してくれました。
会長「智聖くん、ここで寝てていいよ。」
しかし、会議に来ないことで探しに来た顧問の先生に叩き起こされて無茶苦茶不機嫌になったことは懐かしい話です。
送別会について
Yさんは、その後半年間程一緒に働きましたが、特に進展は無く飲み会になると、相変わらず甘えてくる始末でした。年末年始の繁忙期が終わりますと、そろそろ3年生になります。親との決め事で受験生になったらアルバイトは辞める話になりました。
相変わらず、Sチーフはどこ吹く風の対応でしたが、サブチーフの兄貴分Eさんは、快く送り出してくれました。今回は、兄貴分Eさんについて触れます。Eさんは、確か当時35歳ぐらいです。Sチーフが32か33ぐらいでしたので、上司ではあるけど、社歴は下のようです。
Eさんは、元々遠くの店舗にいたようです。秋の異動で25歳のサブチーフと入れ替わりに来ました。郊外勤務が多かったようでして、大都市勤務は初めてのようです。次長曰く、昔いた店舗に中途採用で入った頃から彼を知っていました。
Eさんは、人たらしで有名で悪口を言う人は誰もいませんでした。仕事もできるし、頭も切れる。けれども、野心が見えないことで組織人としてはうだつが上がらないそうでした。
Eさん「智聖、お前ジュース飲めよ。」
「いつもわりぃな!困った事あれば言えよ。」
時効ですが、タバコをよく吸わせてきました笑
とにかく彼の周りには人が集まるので、チーフを通り越して店長と次長と会議をよくしてました。
丁度、退職を決めた3月のある日です。
Eさん「智聖、お前明日空いてるか?」
「はい。空いてます。」
「早いけど、俺とおまえの送別会やろうや。」
「駅前の○○(高級焼肉店)でいいか?」
(嘘でしょ!?)
実はEさんは、和洋中全部作れる調理師だったようです。高校出てから6年~7年ぐらい転々としつつも、料理をしていたようです。元々接客を学びたくて小売店に就職したと聞きました。
次長が言うには、彼は人たらしではあるけど、特に将来性がある若手には、高級寿司店や焼肉屋を誘って送別会をしてくれるそうでした。
次の日、Eさんが夕方で早じまいしまして、自分も高校から帰ってきました。バイト先までお迎えです。
「おー、お前早かったな。じゃいくべ。」
その後、駅前の店で焼肉をご馳走になりました。
Eさん「お前とは、半年間だけど3年ぐらい一緒にいた気がするぜ。」
「実はな、年の離れた姉がいてな、今40半ばなんだけど、お前ぐらいの親戚の子供いるんだよ。」
Eさんは、遠く離れた四国の人だったようです。そのお子さんは今15~6なので、確かに同年代です。ただ、調理師辞めた時に、親御さんに相当反対されたようで、実家にはなかなか帰れないそうです。
Eさん「お年玉も渡せなくてな、結構寂しいもんよ。」
(あー、だから俺を重ねているのかもしれんな。)
身内話をしてくれたことで、Eさんのバックグラウンドが理解できました。
お酒が入ると、どんどん饒舌になってきました。
Eさん「いいか、大学入ってもゴールだと思うなよ。」
「学校と現場は違う。だけど、学生の内は遊んどけ。」
よくわかりませんが、ありがたいご金言だと感じて受け止めました。
2時間ぐらいでお開きになりましたけど、たかが半年間のアルバイトの高校生にここまでしてもらって本当に申し訳なかったですね。
Eさんは、一年後私が受験する前のクリスマスに退職を決められました。どうやら夢を追いかけるそうです。元々料理と接客をマスターしたら、海外で仕事をしたかったそうです。資金も貯まってとうとう動ける時期に来たようでした。
Eさん、「お前が高校出る前に、日本出ちまうわ。」
「いつか帰国したら、また会おうな。」
それからお会いすることなく、数十年が経過していますが、海外でのお仕事がきっと成功していると今でも祈念しています。
Eさんには、画竜点睛の如くを学びました。いつか会いたいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?