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我が家のレモンの木の果実

我が家にはレモンの木が植えてある
毎年暖かい季節になると
アゲハ蝶が果実を持って訪れてくれる

ホームセンターの買い物のついでに立ち寄った
園芸コーナーの100円均一の片隅に置いてあった
葉っぱもなく植え替えポッドにYの字の苗木
なんとなく気になって手に取ってみた
レモンの木がいくらするか分からなかったけど
缶コーヒーを我慢して買えるなら
レモンの果実が1個か2個採れたら
元は取れるなぁと思って買って帰った

隣家との境界を示すだけの
花壇というにはお粗末な場所に
元を取るという期待と一緒に植えられたレモンの木は すくすくと大きくなっていったが
恐らく土の栄養か日照が不足してるのだろう
残念ながら元を取るという
期待した果実は採れなかった
替わりに思わぬ果実が舞い込んできた
それはアオムシである

はらぺこアオムシ

愛娘がはらぺこアオムシの歌を歌い出した頃
我が家にアゲハ蝶が訪れた
アゲハ蝶は愛娘の歌声に魅せられたのか
レモンの木に頼まれたのか
期待された果実の代わりに
いくつもの卵を産んでくれた

はらぺこアオムシ

愛娘はレモンの木とアオムシに向かって
はらぺこアオムシの絵本を持って
毎日はらぺこアオムシの歌を歌っている
愛娘の期待とたくさんのレモンの木の葉っぱを
食べて成長したアオムシは
我が家の壁でサナギになっていた

はらぺこアオムシ

ある日の早朝
はらぺこアオムシの絵本を片手に
眠たい眼をこすりながら歌っている愛娘
私と愛娘とレモンの木の期待を食べた
一匹の太っちょサナギが
我が家から飛び立つ姿を見せてくれた

はらぺこアオムシ

「あっ ちょうちょ!」
歌のセリフなのか心の言葉だったのか
私はその瞬間の愛娘の顔を
生涯忘れることは出来ないだろう
片隅に置いてあった一本の苗木が
我が家に大きな果実を与えてくれた

今はもう愛娘も成長して
はらぺこアオムシの歌を歌うことはないが
愛娘の身長に合わせて剪定しているレモンの木に
今年もアゲハ蝶が訪れてきた
たくさんの果実を持って

私はアゲハ蝶を見ると楽しそうに
レモンの木に向かってはらぺこアオムシの歌を歌う
愛娘を思い出すのである


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