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浜辺さんとワルツくん。

とある動物園に一羽のハシビロコウがいる。
名前をワルツという。

ワルツくん。

「えー!めっちゃ睨んでるじゃん!」
「あれ、腹減ってるんだろうな」
「私なんか悪いことしたかな…」
「迫力すげー!目力すげー!こえー!」

ワルツくんに対し、人々は色々思うようだ。
だが、ワルツくんは実際のところ今、睨んでもいないし腹も減ってないしあなたは悪いことをしていないしそんなにこわくない。

「なぁワルツ、笑顔できねぇ?」
そう言ったのは飼育員の浜辺さんである。浜辺さんはワルツと一緒にいる時間が長く、いつの間にか声が聞こえるようになった。それがワルツくんの声だとすぐに気付いた。そして、お喋りだということも。
「笑顔できる顔の構造してねぇっつの。パーツ分けろってか。というか人間色々考えすぎなんだよ、腹減ってねぇわ、さっき食ったわ。こえーとかさぁ、もうそれぐらいストレートな表現が逆に嬉しーわ。つーかワルツって柄じゃねぇんだよ。動きはワルツかもしんねぇけど違うんだよ、心はタンゴなんだよ。浜辺、名前変えてくれ」

浜辺さんは無表情で「ムリ」と答えた。

浜辺さんイメージ。

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