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芦原一郎著『労働判例から経営を学ぶ15講』(2023年・経営書院)


どんな本?

説明不要、芦原先生の著書です。はしがきを読むと、著者が担当する日大危機管理学部における15回の労働法の講義を1冊の本にまとめたもので、学部生やビジネスパーソンなどを想定読者層としているようです。ですが、それに限らず士業にもおすすめなのではないでしょうか(士業もビジネスパーソンではあるけども)。その理由は、次のとおりです。


感想

  1. 書籍は、最近の労働問題に関する裁判例を素材にして、各講が⑴労働法⑵法的な検討⑶リスクと経営という項目で論じられています。

  2. 上記⑴では、労働法の規律を概観するといった感じ。上記⑵では、各事案について丁寧に規範の分析がなされています。具体的には、労働者側の事情、使用者側の事情、プロセス等というように実体と手続とを意識している点が、判例に触れたことがない想定読者層の方々にとっては「こうやって考えるのか。」と納得するような丁寧な記述になっているように思います。

  3. そして、⑶のところがこの書籍の特色といえると思います。主として企業経営理論に基づく視点から述べられていて、この手の問題でありがちな「じゃあ、どうすればよかったの?今後どうしたらよいの?」という問いに一つの指針を与えてくれるような内容になっていると感じました。例えるならば、労働法令による規律がハードだとすると、経営というソフトの面からの助言といった感じでしょうか。そのような助言(解説)であるからこそ明日からの考え方を少し変えてくれる即効性もあるように感じました。そういう意味で、まさに書名どおり名は体を表した書籍です。

  4. また、各講冒頭にQRコードがあり、それを読み込むと労働判例(判例雑誌)の該当事案のpdfが読み込めるという特典付きです。 先月下旬に発売されたばかりの書籍です。そのため、各講に掲載されている裁判例も令和2-3年のものとなっており、コロナ禍によって生じた労働問題も反映された、まさに今の現場で求められる判断が第一線で活躍する著者によって解説されており、とても勉強になる本でした。


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