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早川吉尚編『オリンピック・パラリンピックから考えるスポーツと法』(2021年・有斐閣)

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どんな本?

コロナ禍で1年延期され2021年に行われた東京オリンピック、パラリンピック。
それらを窓口として、スポーツと法を概観するという書籍です。200ページもないので、土日ゆっくりしている時間で読めます。

感想

  1. 今回のオリパラ開催については、賛否両論ありましたし、開催までのゴタゴタやその後の汚職等による刑事事件の発生もあり、いわゆる「レガシー」に陰りもみえる昨今。この書籍の発売から2年弱が経過してますが、図らずも上記のような現在進行形の事象があることで、まだまだリアリティを感じながら読むことができます。

  2. 個人的に面白いと感じたのは、IOCの団体としての法的性格を論じた箇所や競技団体の裁量とその統制の在り方を論じた箇所、それから、東京大会におけるCAS(スポーツ仲裁裁判所)のアドホックディビジョン、アドホックアンチドーピングディビジョンの実際や東京プロボノサービスの展開などを論じた箇所です。

  3. 特に競技団体の裁量とその統制の在り方について、そもそも競技団体と選手との関係を法的側面からどう捉えるべきか確かによくよく考えてみると不明瞭だなという点でもあり、その分析が非常に興味深かったです。また、JSAA(日本スポーツ仲裁機構)では、選手選考などについて競技団体が有する裁量の統制について、行政裁量の統制に似た基準を示しており、それが私人である競技団体をなぜ拘束するのかという統制の根拠について論じた部分も、ひざを打つものでした。たしかに、公金が投入されているという切り口だけでは不十分で、スポーツという、公平性が求められる活動であるがゆえに、そこから団体の公平性を導いて論述しているところに納得しました。

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