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前回、中学校選びは「結婚」と同じだという、おおたとしまさ氏の言葉を紹介しました。

 また、学校は、教科書の内容を習う場所ではなく、各学校で育まれた文化をシェアしあう場であり、さまざまな文化に触れる場でもある、といいます。

 私自身、中学が私立だったので肌感覚をもっていますが、確かに、私立には、建学以来、先輩から脈々と受け継がれてきた伝統や精神のようなものがあると感じます。

 おおた氏は、これを別の言葉で、学校独自の“非認知能力”、社会学の言葉でハビトゥスと言われるもの、とも表現していました。

非認知能力」という言葉は、私自身不勉強で、よく知りませんでした。

 調べてみると、非認知能力とは、意欲(やる気、集中力)、粘り強さ、自制心、自分を信じる力、客観的思考力、リーダーシップ、協調性といった数値では測りにくい能力のこと。

 これに対し、認知能力とは、学力、IQなど、テストで測定し、指標化して「認知」できる能力のこと。

 なるほど、と思いました。

 おおた氏は、中高一貫校では、学校独自の非認知能力を身に付けることができる点が魅力だと言っていましたが、この非認知能力こそ、中学受験で必要な能力であり、3年間の受験勉強を通じて養われるものだと思います。

 我が家では息子が小4から3年間、中学受験のための勉強を続け、それをすぐそばでずっと見てきました。

 私自身もかなり関与し、時間管理や各科目の学習状況の管理、直接指導などをしました。

 その経験から言えることは、何よりも、本人の学習意欲と粘り強さ、やり抜く力が決定的に重要だということです。

 中学受験の道は長く険しく、いくら外から言っても、本人がその気にならならなければ一歩も前に進みません。

 途中で立ち止まってしまい、いくら背中を押そうとしてもビクとも動かないことも多々ありました。

 中学入試では、試験問題で「認知能力」を測定しますが、難関校の入試では、通り一遍の知識や解法を知っているだけでは全く歯が立たず、高いレベルで思考力や応用力が求められる問題が出ます。

 これは、入試問題を通じて、その学校の「非認知能力」への適性というか、その学校に入って、更に力を伸ばすことが出来そうかどうか、も見ようとしているのではないかと思います。

 難関校の問題を見ると、学校ごとに問題の傾向が異なり、科目毎にもかなり学校の特色が色濃く出ます。

 入試問題を通じて、何が問われているのか、どのような力が必要なのか、学校側が求める人材像がそこから何となく浮かび上がってくるような気がします。

 2017年の麻布中の理科の問題に、次のような記述がありました。

『ここまでの話を聞くと、ヒトはトンボよりも優れていると思えてしまいます。しかし、ヒトはトンボとちがって飛ぶことができません。血液を使って酸素を全身に運ぶので、ヒトの体は飛ぶには重すぎるのです。進化と聞くと、生物が優れたものに変化するように思うかもしれませんが、進化で生まれるのは「ちがい」であって「優劣」ではないのです。』

 問1から問8までの問題と質問のあと、つまり問題用紙の最後の最後に書かれていました。

 つまり、問題のヒントや条件ではなく、こういう思考ができる生徒を求めているという学校からのメッセージだったのです。


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