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『譲れない思い…』

本日、新しくお客様になる方の、退院前カンファレンスに参加。
まだまだお若い50代の女性。癌終末期により予後は1ヶ月…。
自分とかぶる年齢なので、お会いするまで、とても緊張していた。

点滴台を押しながら相談室に入ってきた彼女は、色白で、目がパッチリした素敵な女性だった。抗がん剤の副作用か、頭にはきれいなオレンジ色の帽子を被っている。

担当看護師さんより、『これから自宅へ帰って不安な事や、聞きたいことがあれば言って下さい』と言われると、彼女の口から出てきたのは、すべて家族のことだった。

認知症になってしまった義理の母。
89才で歩行が厳しくなり、先日スーパーで転倒しケガをしてしまった義理の父。
一旦施設に入所したものの、どうしても嫌だと言って、現在自宅で独居になっている実母。そして、ご主人。

『自分のことはいいの?』 思わず、言ってしまいそうになる自分をグッとこらえ、彼女の心配事を傾聴する。涙が出そうになった。

予後1ヶ月と先日宣告されたばかりなのに、自分のことより、家族のこと。その時は純粋に、強い女性だと感じたが、う~ん⁈でも…強いという表現は違っているのかもしれない。上手く言えないが、もしかしたら人は、自分の最期を告げられた時、一番初めに頭に浮かぶのは、自分の愛する人たち、つまりは自分の周りの残される人たちの今後の生活なのかもしれない。

そう考えると、きっと私も同じように、自分のことより、家族や友人、はるかのことを真っ先に考えるんだろうな~と感じた。
これは、女性だから?世の男性方は、どうなんだろう?やっぱり同じように、考えるのだろうか?


『夢をかなえるゾウ4』(水野敬也作)に登場する主人公の男性は、自分が癌で早々に死んでしまうと思い込み、家族のために少しでもお金を残そうと、一生懸命アレやコレやと頑張って、夢を実現していくというストーリがあった。ただこの話には落ちがあって、実は癌だったのは自分ではなく、奥さんの方だったのだ。

この男性のように、残される家族のために一生懸命尽くす方もいるとすれば(小説ではあるが!)、男性だろうが女性だろうが、最期は自分ではなく、愛する人たちのことでいっぱいになるのかもしれない。そう言われれば、先月他界された鶴さんも、そうだったなぁ~(:_;)

彼女の残された人生が、悔いなく過ごせるように…精一杯務めさせていただきます。

 話は変わって、先日、ACP(人生会議)の相談員研修に参加させていただいた。
自分の人生を自分らしく、締めくくるために、自分の想いを共有しておく。また、その方を取り囲む周囲の人間は、常にその方の望む暮らしが送れるよう、サポートしていく。

たとえ、ご本人が自分の意志を伝えられない状況になったとしても、何とか周りの人たちで、その方の想いをくみ取ろうとする努力を怠ってはいけない。常に、その方の想いにまっすぐに…。
多職種が関わって開催する、ACP。

それぞれの立場はあっても、常に忘れてはいけないことがある。それは、その方の想い。

ACPは、開催することが目的ではなく、その方の尊厳を守り切ることが目的。

私はこれから、どこまでお客様の尊厳を守り切ることができるのだろう…。
お客様の生活をお預かりするホスピスの職員として、お客様に寄り添えば…譲れない時もある。
これから多くのACPを開催することになるだろう。
ますます、勉強が必要です。🌙

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