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こわい風習

南信州新聞連載作品「満洲-お国を何百里-」は、満洲から南信州の龍神村へお盆の里帰りをした男の模様を描いている。
このエピソードには、架空の村として、龍神村という名称を用いている。直接の名称が好ましくないと思う因習を挟んだからだ。
風習そのものの取り上げも懸念したが、もうとっくに風化したから問題はないだろうという編集の声で、使用させていただいた。
「おじろく」
「おばさ」
この名称ひとつで、おどろおどろしい印象を与えてしまう。

戦時中、富裕層の一部一家には残されていたという風習。
あくまでもその時代の闇を、ただの日常会話に盛り込むという形で、作中の戦時下を描いてみたのだ。

人間とは罪深いが、生き残るためには同胞の何かを犠牲にすることが余儀なくされる。仕方のないことだ。ましてや生産性の低い土地でなら、尚のことである。

満洲を描くだけではなく、今回は南信州の郷土までを題材にさせて頂いているが、決して
「あそこん家が」
ということではなく、名称を架空にした時点で、これは創作された一家の闇にすぎない、ということをご理解いただきたいのである。

近代史って、難しいね。
それに、デリケートで……こわい!