嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞～十三の歌～

《あんたや！》　原作：陽成院
なに頭かかえんとんじゃ、どないしたんや？
ははぁ～ん、結婚したい女子（おなご）おるんやろ。
初めは浅うても、だんだんつもって深うなる。それが、恋淵ちゅうもんや。
通天閣から飛び降りたつもりで怒鳴り込んだらんかい！
あかんて？　どないしてや。
好きな娘のオヤジが恐いてか。誰やそれ？
(注) 通天閣＝大阪市浪速区の歓楽街、新世界の中心にある展望塔。

定家　「どうも、あきれるなぁ、このオヤジさん。筑波嶺の　嶺より落つる　みなの川　恋ぞつもりて　淵となりぬ。この気持ち、分かってそうで分かってへんな」
蓮生　「目の前の男が自分の娘に言い寄っとると分かったら、何するか分からへんで」
定家　「分からんほうが分かるよりええて、ほんまに分け分からんわ」
蓮生　「恋は命がけ、やな」
定家　「ま、そうでないと恋とは言わん」