愛のある人柄【ペスト③/カミュ】
ペスト何とか読み終えることができた。
本当は100ページごとに記事を書こうかと思っていたたが、最後の方は先が読みたいという気持ちに誘われて最後まで読んでしまった。
ペストは読みごたえのある小説だと思っている。いわゆる噛めば噛むほど味が出るような、二度三度と繰り返すごとに記憶に新しいものを発見できるとものだと。
しかし逆に捉えると、一度では分かりづらい小説でもあると思う。これでもかというほど、色々なものを詰め込んだ”一文”というのがいくつもあって何度も読み返す作業をしていた。
でも私にとってはこれこそが、文学を味わっている人たちが感じているところに一歩近づいたような、何とも言えない満足感に浸ることができる要素になっていると思う。
今回の私の感想としては、正直に薄いものになってしまうと思う。なので、私の感想を遥かに超えた素晴らしい作品だということをここで述べておこう。
私が印象に残っているのは、主人公であるリウーという人の暖かい人柄である。初めの方は小難しいと感じる文章が多く人物像をなかなか捉えることができなかった。
登場人物が増えるごとに彼らと関わるリウーの姿も描かれている。そんな彼は、誠実にペスト患者と向き合い。また、立場が異なる相手に対しても誠実に関わっていた。
そしてその誠実さはとても控えめなもので静かであった。小説の後半で、だんだん気づいてくるのはリウーの暖かい気持ちだった。振り返ってみると一貫して彼は、ペストの災禍でもがきながらも、人に対して愛のある姿勢をとり続けてきたのだと分かる。
アルベルト・カミュとは、このように愛のある人物だったのではないか?そんなことがわかるかのように、その愛が伝わってきた。
正直に言うと、もっと感じたところはたくさんあったのだが私の読書力はいまだ浅く、感想文を書くにはもっと読み返す必要があると感じている。
神の教えを説いていた神父パヌルーが亡くなったことや、だれでもペストを内にもっているという考えを持つタルーの生きざま。小説最後に、事件を起こしてしまった孤独なコタール。
多くの個性的な登場人物をとおして、カミュが表現したかった何かを伝えることが難しいと感じている。これは、またぜひ再読したいなと感じている作品だ。
ただ、私がはっきり言えること。
それはこのペストを読んでかなり文章を読む力がついたように思う。というのは、難解だと言われているドストエフスキーの『罪と罰』を読み始めているのだが、それが不思議とすらすら読めてしまうからである。
これが不思議に感じた。
ペストを読むきっかけになったのが、フランスについて興味があったから。その奥には、香水が大好きだという気持ちが横たわっている。香水にまつわる歴史、フランス語のブランド名などフランスを知ることで香水の世界がもっと楽しくなるのではないかという発想があった。
でもこれが動機で良かった。もっと浅い動機であったならば、通読することは難しかったと思う。『知りたい』という気持ちは、困難を乗り越える大きなエネルギーのあるものだと感じた。
さらには、人生で一度は読めたらかっこいいだろうなと思っていた『罪と罰』でいいスタートを切れたのも、もとはと言えば香水が大好きだという気持ちだったからだ。
最後に言うが、必ずペストは再読すると決めている。2度目はもっと新しい気づきと楽しさがあるだろうと確信している。
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