詩:死


思い出はいつもくるぶしを触っている
手加減できたときから
ようやく始まりの始まり
満足できたと言えることが
少しずつ小さいかけらを噛んでいる
振り返るもの
小さく怯えるもの
歪んだ顔の結晶たち
それらがやがて風化する前に
今を生きていくのだろう

だんだん畑は苦い夏だった
植えた苗が大きくなり始める頃
手のひらの小ささに気づいてしまう
日差しの強い坂道を
駆け降りた先にあなたの笑顔が見えると
うまく呼吸をすることができました
コンクリートで塗り固められた苦い思い出も
はやとちりだった薄紅の感触も
消えるまでは本物のような気がしていた

摘みなれた一つ一つの偶然が
爆発する声を追ってきて
あっちこっちに
拡散する
もう急ぐ必要はないと
支えていたつっかえ棒をはずす
稲妻の正体はなんてことない空腹でした

昨日は箱庭の王様だった
囲まれた木々のひすべ辺りを見回せと命令する
家来たちは沈黙し
隙間風のような合図を目で送る
知らない言葉をしまっておくように再度命令すると
家来たちは木枯らしのように歩き回って
長いお別れに蓋をする
決まりごとのパレード
ラッパは同じ音しか出せない
そのうち景色も朽ち果てて
いつの間にか
行方知れずの歪んだ鏡みたいになるだろう
骨だけ残して

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