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生涯学習を考える:UNESCOの記事' How lifelong learning made Pat believe in himself' を例にとり(2,633文字)

はじめに:生涯学習を考える

生涯学習やリカレント教育について,以前より記事にしてきました。

調べる:「生涯学習」にみる,その定義の変化(2,299文字)
調べる:リカレント教育に関わる定義をどう考えるか(2,044文字)
など

これまでの定義などはおよそOECD(Home page - OECD)などを中心として参考とし記述しました。それは,日本における教育の方針がおよそOECDを参考としていると考えられるためです。

How lifelong learning made Pat believe in himself

今回はUNESCO(UIL |ユネスコ生涯学習研究所 (unesco.org) ) の2022年12月10日の記事,How lifelong learning made Pat believe in himself | UIL (unesco.org) を例として記述してみたいと思います。

記事中の男性は,15歳で(苦痛である)学校を卒業するまで,読み書きの能力を身に付けることが出来なかったといわれています。彼はその後職を得て,上司に認められるまでになりましたが,銀行などの手続きも出来ないほどに識字能力などの基本的な学習に係る能力がないことを悩んでいました。

6人に1人が識字能力がない

本記事中においてアイルランドでは,6人に1人が識字能力がないとされています。読み書きの能力です。読み書きができなければ,助成金を受け取ることも,取引をすることも,契約を行うことも出来ません。社会参加する一個人としても大変なハンディキャップとなることはわかります。

しかし,彼はやがて失業などの問題から文字を読むことを学び始め,先生より芸術大学への進学を勧められました。かれは低所得者であったため,大学のスタッフと共に助成金を申請し,そして,それを得ることが出来ました。

教育ではなく,自分自身を信じさせた

彼はそこで4年間の努力をし,見事に卒業しました。彼はこう語っています。

"When I graduated, I found it amazing because I thought, that was the day that was never going to come. That was the day I thought I would never see because I was going to be a drop-out. I was convinced that I could not do this. But the encouragement from the college and the teachers was so great. They made me believe, not in the education, but in myself!"
Pat Fitzsimons; Learner in the UNESCO learning city of Dublin
How lifelong learning made Pat believe in himself | UIL (unesco.org) より

特に,' They made me believe, not in the education, but in myself! '(彼らは私に教育ではなく自分自身を信じさせました!)の言葉が胸に刺さります。

教育を信じるのではなく,自分自身を信じること。それを教育を通じ人々により支えられ,身に付ける。言葉を身に付け,そしてそれらを駆使し,社会に自分自身が参加していく。このような意味合いなのか,それはわかりませんが,大変な喜びが伝わってきます。

生涯学習のありかたの違い

OECDは経済協力開発機構として,主に経済や産業に係る人々の教育としての方向性を示します。それに対して,UNESCOは個人個人の尊厳を大切にしていることが理解できるように思います。

また,低所得者向けの助成金の申請には,そもそもその手伝いが必要であること。そしてそれはなんら恥ずべきことではないこと。人は一人一人が尊厳を持つ存在であること。そのようなことが,これらの記事からは伝わってきます。

どのように機関が発達しても,制度が設計されても,それに取り残される人たちは居ます。それは年齢によるものかも,性別によるものかも,そして居住区や国籍,また所得などの制限を受けた人たちです。そのほかにも様々な問題がこの世界にはあるでしょう。

ユネスコによる生涯学習

それらを具体的に解決する方法として,ユネスコでは「ユネスコ学習都市ネットワーク」(UNESCO Global Network of Learning Cities | UIL)と呼ばれるものがあるようです。本記事において取り上げられたのは「ダブリン学習都市」(Dublin Learning City - A learning Festival in the Capital)でした。

「生涯学習」とはなんでしょうか。ユネスコにおいてはそれは「独習」ではなく,「教育」により,さらにひとびとを「支え」そして「自分自身を信じること」につながる教育を「生涯にわたり」提供する都市の創造へとつながっているようです。

おわりに:人々への支えの必要性

私が特に注目した点は,「教育を受ける機会を逸した大人」に対し,「能力を認め,そして推薦し」「申請を手伝い」「学びに協力し」た学習都市の機能です。学びや学習,そして教育といわれるものの理念はこのようなことの実現無しに,そのすばらしさを伝えることはできないのではないだろうか。そのようなことを感じました。

教育の素晴らしさ,ではなく,自分自身の素晴らしさに気づく。

そのような機会が多くあることは素晴らしいことだと思いました。また,識字能力は日本においては100%に近いと言われていますが,それは本当でしょうか。現実に社会に生きていますとそうとは思われません。アイルランド共和国における6人に1人という数字は,他国の出来事とは思われませんでした。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。
また,よろしくお願いいたします。

※記事中にある情報は2022年12月12日現在です。
※記事は個人の意見及び主観です。正確にはそれぞれの引用元の情報や,専門の書籍などをご参照ください。

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