超短編「白い猫と牛乳」


ある時、白い猫は殺し屋に飼われていました。
毎朝、一緒に牛乳を飲むことが習慣でした。
飼い猫といっても、殺し屋には、みすみす痕跡を残すようなことは許されませんから
同じ部屋で過ごす時間は限られていました。

それでも、一人ぼっちの白い猫は毎日欠かさず、殺し屋の部屋にやってきました。

殺し屋といっても、人の子ですから、膝の上も、そして白い猫を撫でるその手も温かでした。

殺し屋はお掃除屋さんでもあります。
そう、とても清潔だったので、いつも微かな洗剤の匂いのする男でした。
微かな洗剤の香りと一緒に白い猫は 殺し屋の体臭を嗅ぎ分けてました。
もう殺し屋の匂いは、白い猫にとって安心できる場所そのものになっていました。

殺し屋と会えた時は、まず足に擦り寄ります。抱っこしてもらえたら鼻先を舐めます。抱きしめてもらったら、頬擦りします。そして喉を鳴らします。
ある夜、いつものように、白い猫は、殺し屋の部屋の窓に来てみましたが、電気も点いてなく真っ暗でした。

玄関は閉まったままです。
階段を降りていくと、紙袋が落ちてました。微かに殺し屋の匂いがありました。紙袋の中に白い猫は顔を突っ込みました。
中には牛乳とパンが入ってました。
白い猫は匂いを辿っていきました。
殺し屋の匂いは川の前で途絶えました。
それから白い猫は川原で過ごすようになりました。
たまに、殺し屋と飲んでいた牛乳パックが捨てられていることがありましたが、もう男の匂いを嗅ぐことはありませんでした。

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