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不安や落ち込みで動けない‥からの脱却!!ー認知行動療法ー

「頭の中が嫌な考えがグルグルしてあっという間に1日終わっちゃった」
「勉強しようと思ったけど、ずっとYoutubeみてた、、」
「気分が落ち込んでいて動けない」
「休職中だけど、家でどう過ごしていたら良いかわからない」
「やりたいことあるのに、面倒で動けない」

医療機関に勤めている時、このような悩みを抱える方々に沢山お会いしてきました。そして、認知行動療法というツールを通して、皆さんの困り事解消をお手伝いしてきました。私が対象にしていたのはうつ病や不安障害と診断を受けていた方々でしたが、この認知行動療法は健康な方であっても利用できる、役立つ手法なのです。

かくいう私も物事を何でも先延ばしにしてしまい、スマホや部屋の中の漫画に時間を取られ、やらなければならないことが一切終わらないタイプの人間でした。長期の休みがあってもほとんどをダラダラと過ごしているタイプです。家から出れば楽しいことはあるような気もするのですが、やっぱり億劫、面倒くさいが勝ってしまう。。そんな日々が続くと、趣味もなく、毎日仕事はするけれども特別楽しいこともない。むしろなんだかどんよりとした憂鬱な気分が続くこともありました。気分によって行動が左右され、考えもネガティブになっていったのです。

そんな私が行動活性化を学ぶようになり、実際に患者さんと実践をしてみたところ、患者さんだけではなく私の行動も変わりました。そして行動が変わると気分が変わり、気分が変わると考え方も変わっていきました。
具体的にはずっと気になっていたドラム教室に通ってみたり、仕事で作らなきゃいけなかった資料を余裕を持って作ることが出来たり、良いことが起こりました。もちろんダラダラがなくなったわけではありません!!ダラダラする時も大切!!けど、「自分の気分に振り回される」ことは大分減ったかと思います。

ここでは認知行動療法のスキルの一つである「行動活性化療法」についてお話していきたいと思います。


うつは悪いことばっかりなの?


皆さんは「うつ」「悲しい」などにはどのようなイメージがありますか?多くはネガティブなイメージがあるでしょう。人は悲しい出来事があれば誰しも気分が落ち込みます。そして時間と共に回復していきます。しかしこれが長い期間回復しなかったり、落ち込みが強すぎたりすると、「うつ病」と診断されることがあります。
悲しみは「大事な何かを失ったよ」というサインです。活動量を下げ、なるべく家にいるようになることでエネルギーを回復させたり、気持ちを整理する時間を確保することができます。一時的にとても重要な役割を担ってくれているのです。

しかし、これらが長引いてしまうと活動や考え方が習慣化してしまい、普段から中々動けなくなったり、悪い考えやイメージがずっと続くようになります。
「気分が良くなったら動こう」と思ってずっと動けないでいると、楽しい気分になるきっかけもありませんから、当然気分は低いままです。「気分がよくなったら」という世界線はやってきません。

気分が良くない状態→ソファで考え事をする(行動)→気分が良くない状態が続く、がループします。

行動活性化は、この行動を変えてみることで気分の変化を目指す心理療法です。
「いや、その行動をするのが大変なんだよ!!」という声が聞こえてきそうです。
本当にその通りです。では行動活性化ではどのような手順で、行動が難しかった人たちがどのように行動を起こしていくのかお話ししていきます。


①現在地を知る


行動活性化は「闇雲に動くのじゃー!」とか「元気があれば何でもできる!」というマッチョな考えではありません。まずは今、どのような生活習慣を送っていて、どんな行動をしている時気分が良くて、どんな時に気分がよくないのかを見ていきます。「活動記録表」というツールを使って1週間ごとに自分の活動をモニターしていくのですが、シンプルですが意外と画期的です。
すると、「あれ、夜の時間帯に気分が低い時間帯があるな」とか「友達と長電話した後、決まって気分が下がっているかも」とか意外な発見があったりします。これ、原理的にはレコーディングダイエットと似た現象が起きます。レコーディングダイエットの「書くようになってから食事が整うようになった」のように「書くようになってから、少し夜中のスマホゲームの時間を減らすようになった」という現象が起き始めます。

↓活動記録表の例
あれ?書いてみると1週間のうち結構Youtubeに時間取られてるな。そして意外と気分が良くなっているわけじゃないのか。。そして、読書はなかなか出来なかったけど、活動できたら少し気分良いんだな。。そういえば昔から本読むの好きだったもんな、、(行動の横に書いてある数字はその時点の気分の良さを自己評価で記載したものです)

②何をするか決める


気分が良くない行動や気分が良くない時間帯を発見したら、次に「どのような行動に変えてみたいか」を考えてみます。これは考えてみると意外に何をしたら良いか分からなくなります。正直最初は何でも良いです、「行動を変えてみる」ことに慣れるためにあまり難しく考えない方が良いです。

1、過去に楽しめていた趣味
2、自分がやりたいなと思って後回しにしてきたこと
3、人がやっていて自分もやってみたいなと思っていたこと

こんな中から考えてみても良いかもしれません。しかし、「それもないです!」とか、「それをできる元気がまだありません!」という方もいるでしょう。例えばうつ病で苦しんでいた方が、過去に楽しめていたからといっていきなりゴルフを始めてみるのは難儀です。ここではいかにハードル低く始められるか、もポイントになってきます。

家の中で始められる活動
具合が悪くてもできる活動

を考えてみてください。いきなり「ジムに行って運動する!」とかより、「寝転がってできるストレッチを1分やってみる」の方がやれるイメージ湧きませんか?完璧主義的な考え方がある人は「そんなんじゃ意味ないんじゃないか」と考える人が多いですが、いかにスモールステップで活動ができるかがポイントの1つです。


ポイントの2つ目は、これから行う活動が「自分の価値に沿っているか」です。例えば「私は仕事をバリバリやって活躍したい」という価値がある人が「1時間ゲームをする」という活動をしてみてもあまりしっくりこないかもしれません。それなら仕事に繋がるような第一歩として「本屋に行って資格の本を立ち読みする」とか、あるいは将来的に仕事ができるようになるために「1日1回、リラックスの時間を取り入れる」とかの方が目標に向かっている感覚が持てるでしょう。
人それぞれ価値は違います。健康を大事にしたい、家族と大切な時間を過ごしたい、プライベートを充実させたい、仕事を頑張りたい、ペットとのんびり暮らしたい、皆さんの今後目指したい方向性を考えてみて、活動を取り入れてみましょう。

色々と書きましたが、思いつかないことがほとんどです!大丈夫です!初めは中々上手くいかないし、しっくりきません!「何かやってみる」これだ大事だと思ってください。


③いつ、どれくらいやるかを決める
実験的にやってみる行動を決めたら、「いつ、どれくらいやるかを決める」フェーズです。いつかやろうと思っていたことは、やがて記憶の片隅に追いやられ、気づいたらやっていなかった、、ということになります。いつやるかを決めておく、計画をしておくことで実行の確率は格段に高まります。
そしてどれくらいやるかを決めないと、「1時間くらいの勉強じゃまだまだだ」とついついマッチョな考えになってしまったり、ついついネガティブな主観がお邪魔をしてくることがあります。

例)①
悩み:朝2度寝、3度寝をしてしまった中々午前中動けないでモヤモヤしている
目標:午前中から活動して、健康的に過ごしたい
行動:朝、9時にコーヒーを1杯飲む

例)②
悩み:夜になるといつも不安で考え事をしていて苦しい
目標:考え事をしている時間を減らしたい
行動:19時に近所のコンビニ付近まで散歩をする
   19時にアプリで一人カラオケを2曲歌ってみる

例があまりイケてないかもしれませんが、このようにいつやるのか、どれくらいやるのかを明確にします。行動活性化ではこうした計画を立てたらカウンセラーにやると宣言したり、ご家族がいればご家族に宣言してみても良いかもしれません。「言ったからにはやらないと!」の心理を上手く使っていきます。


③実験結果を振り返る
実際に行動をしてみたら、実験結果を振り返ります。ぶっちゃけて言うと最初は上手く行ったかどうかはあまり重要視していません。上手く行ったらラッキーくらいです。大事なのは「実験データを集めること」だからです。科学の実験でも失敗に失敗を重ねて、データを積み重ねていきます。一撃でうまく行ってしまうと何が良かったんだかわからないことってありますよね。
行動を実際にやってみると

・めっちゃめんどくさかった。今回の計画は工数が多すぎた
・やってみると簡単すぎて達成感があまりなかった
・夜アプリで一人カラオケしたら「考え事しながら歌う」が出来ないから考え事が減った、けど体力的に2曲が限界だなと思った。あと隣の部屋で親に聞こえているのが恥ずかしかった

などなど、色んな課題が見えてきます。課題を発見したら勝ちです。その課題を乗り越える方法を考え、またプランを練り直す、そうして実験を繰り返しているうちに、あなたの生活にフィットした「気分が良くなる行動」が育ってきます。そして習慣化していくことで、気分が良くなるループに変わっていきます。

文字で書くとやや簡単そうに見えます。実際は途中でモチベーションが続かなくなったり、どんな行動をして良いかわからなくなったり、体調が悪くってもそれどころではなくなったり、行動することを頑張りすぎて疲弊してしまったり、いろいろなことが出てきます。
そのため、コツを掴むまではカウンセラーと二人三脚で行っていくことをお勧めします。カウンセラーと話し合いながら行うことで、モチベーションが維持できたり、良い活動を思いついたり、結果を一緒に振り返ることができるからです。

一つ注意点としては、行動活性化自体の副作用はありまあせんが、例えば双極性障害にお悩みの方で「たくさんの活動を頑張りすぎてしまう」きっかけになってしまう方がいらっしゃいます。そうしたことを防止するためには、主治医がいる方は主治医と相談したり、カウンセラーと程よいプランを作成していくことをお勧めします。


まとめ


行動活性化は「行動しまくる」のではなく「活動を通して気分を良くする」心理療法です。どんな方にも馴染みやすいものだと思いますし、私も行動活性化の原理にしたがって活動することがあります。一番身近な例で言うと「皿洗いがめんどくさくて溜め込んでしまう。洗おうと思うとついYoutubeを観て結局やらない」と言う困り事がありました。そして、この行動活性化を患者様と一緒に実践している時に、私もプランを立てました。自信がなかったのでハードルを下げて「水道から水を出す」と言うプランにしました。「皿を洗う」はハードルが高いと感じ、その前の「水を出す」までならまぁできるだろうと思いました。
実際に食事を食べ終わり、「水を出す」を実行すると目の前でジャーっと水が流れ出します。「水道代がもったいない」「もうここまでやっちゃったら、、」と言う気持ちで皿洗いができました。その後は「Youtubeを観ながら皿を洗えばいいんだ!」と思い楽しく皿洗いができるようになりました。最初の小さな一歩を踏み出すことの重要性は、身近な生活からでも感じることができます。

この行動活性化について実践してみたい方はぜひカウンセリングを受けてみてください。私は認知行動療法を専門として医療機関でこうした心理療法の実績を積んできました。カウンセリングのご希望の方はぜひ、当オフィスのホームページを一度ご覧になってみて頂けたらと思います。


長文でしたが、皆さんにとって有益な情報になれば幸いです。
それでは皆さんとお会いできることをお待ちしております。

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