介護離職についてPart4-介護離職はなぜ起こるのか(2)被介護者の属性
前回に引き続き、「介護離職者の離職理由の詳細等の調査及び勤労世代の介護離職防止に資する介護保険制度の広報資料等の作成」(令和6年3月 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)のデータより、今回は被介護者の属性について見ていきたいと思います
被介護者の続柄・年齢
本人との続柄は、就業継続者層、介護離職者層ともに自身の父母がおおよそ6割を占め、次いで自身の祖父母が続きます。この3つの項目で7〜8割を占めています。
介護離職者層に特徴的なのは、「配偶者、パートナー」が1割程度を占めていることです。介護が始まったときの被介護者の年齢を見てみると、介護離職者層では20代〜40代のいずれもが、就業継続者層より高くなっています。これは、配偶者・パートナーの介護をしている割合が高いためだと考えられます。
80代、90代の割合は、就業継続者層の方が高くなっていますが、これは介護離職者層の被介護者の年齢割合が、若年側の比重が高くなっているためと考えられます。
被介護者の疾患
被介護者の疾患を見てみると、認知症、がんは就業継続者層のほうが割合が高く、介護離職者層は脳血管疾患や心疾患といった、内臓系の疾患の割合が全体的に高くなっています。 また、精神疾患が多いのも注目すべきでしょう。
認知症の割合が介護離職者層の方が低いのは、他の理由の割合が高くなったことにより、相対的に低くなっているものと思われます。
がんについては、末期までADL(日常生活動作)が低下せずに保たれることが多く、死の直前に急速に悪化するいう経過をたどることが多いため、家族が介護を行う場合でも短期決戦になることが多く、離職に至らなかったと推測されます。
被介護者の要介護度
次に要介護度について考察していきます。
要支援1〜要介護2までは介護離職者層の方が高く、要介護3が同程度、要介護4,5は介護離職者層のほうが高くなっています。
意外な結果のように思えるかもしれませんが、これには大きく2つの理由が考えられます。
一つは、「利用している(していた)サービス」、「被介護者の生活場所」のデータから読み取れる通り、就業継続者層は、病院、施設、高齢者住宅の割合が介護離職者層より高くなっており、「介護度は高いが施設等に入所しているので離職に至らなかった」ケースが比較的多いからと考えられます。
2つ目の理由は、「認知症を患っているが、体が元気なため頻回の見守りが必要である」という状態像の高齢者は、要介護2〜3くらいになることが多いということです。これは介護あるあるなのですが、状態が悪化し寝たきり等になると(要介護4〜5)かえって介護が楽になるという逆転現象が発生することがあるのです。
行っている介護の状況
最後にどの程度、自ら介護を行っているのかについて見ていきたいと思います。
排泄、食事、入浴などの身体介護、見守り・声掛けや家事の援助など全体的に介護離職者層が高くなっています。
この調査は、離職をした当時(離職前)の状況をヒアリングしており、自ら介護を行うことが介護離職をすることと相関関係があることがわかります。
被介護者の属性:まとめ
被介護者は介護者の父母が中心、配偶者の介護が必要になると介護離職に至る可能性が高くなる。
身体介護、生活援助、見守りを担う頻度が増えると介護離職に至りやすい。
要介護状態が重度になると施設入所が増え、逆説的に就業継続が可能となることが示唆される。