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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1995)

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1995、フジテレビ=共同テレビ、49分)
●脚本・監督:岩井俊二
●出演:山崎裕太、奥菜恵、反町孝幸

この映画は奥菜恵が完璧な美少女だったころの、そして僕らが90年代に小学生だったころの、あの夏の儚い一瞬に思いを馳せる、そんなノスタルジー満載のアルバムのようなものである。

元々は1993年に放映された岩井俊二によるテレビドラマの作品を映画用に編集したもの。

なので50分という短さと、サイズも4:3となっている。


男子たちの繰り出す昇竜拳。夏休み。プールで水を「ビシッ!ブシッ」みたいに飛ばして技みたいにする。スラムダンクの最新刊。スーファミ。Jリーグ。

夜道を怖くなってみんなで「オーレーオレオレオレーうぃーあーざちゃーん うぃーあざちゃーんぴおん」という光景なんて見ているだけでなんか涙が出てくるような。

それにたいしての、男子たちが束になっても適わないほどに大人びた少女、なずな(奥菜恵)。

プールサイドで片足だけ水に浸して寝そべる姿や、浴衣で大きなトランクを引きずる姿など、徹底的に写実的である男子たちに対してなずなだけはロマン主義的というかフォトジェニックに撮られている。

確かにこのくらいの男子というのは女子と比べて本当に子どもと大人くらいに精神年齢が離れているので(駆け落ちという言葉も知らない)、これくらいやり切っても全然嘘くさくは感じないというか現に奥菜恵という美少女が存在しているのですでに事実なのだ。

ベニスに死す』がビョルン・アンドレセンの存在なくして成り立たないように、本作も奥菜恵の存在なしに成立はしなかったと断言できる。

そんな大人びた少女が声変わりもしてないような同級生男子に告白する(形の上でだが)シーンは違和感あるような気もするが、まだ小学生だとそんな感じもギリギリあり得るのかな。(中学生になれば彼らのようなガキ男子は相手にすらされないだろう…)

そして、女に告白されて男同士の約束を破るというダサさを極度に恐れる小学生男子、これは本当にうなずける場面であり、この辺の繊細な描写がうまいな~と感じ入ってしまう。

今度会えるの二学期だね。楽しみだね

と言ったままなずなは消えた。

打ち上げ花火のように一瞬で消えて、打ち上げ花火よりも美しく永遠に心に残るものがあるとこの映画は教えてくれる。

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