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オン・ザ・ミルキー・ロード(2016🇷🇸)

原題: ON THE MILKY ROAD(2016、セルビア=イギリス=アメリカ、125分)
●脚本・監督:エミール・クストリッツァ
●出演:エミール・クストリッツァ、モニカ・ベルッチ、スロボダ・ミチャロヴィッチ、プレドラグ・"ミキ"・マノイロヴィッチ

『ON THE MILKY ROAD』というタイトルは、戦時中とある村のミルク運びの男コスタ(クストリッツァ)が義兄の花嫁(ベルッチ)と決死の逃避行を行うというストーリーに加えて、”ここではないどこか”を目指したケルアックの『路上』への示唆もある。

戦時中であるがもはや戦争が日常と化し、悲壮感などは一切ない陽性の雰囲気。

戦闘しているすぐそばで人々は生活を続けている。

オープニングにてヘビを捕えるハヤブサと軍事ヘリの映像がモンタージュされる。

戦争を肯定などしてないと思うが、命の奪い合いはこの地球上で常に起きている、攻撃していたものが逆に攻撃される側に回ることだってあると示しているようだ。

村を焼き払いに来た兵士たちが、銃や火炎放射器をもってしても蝶一羽殺せないシーンや、ミツバチの群れに兵士たちが襲われるシーンが象徴的だ。

弱者と強者などという単純な構造などなく、様々な状況下によってその時々の勝者が決まるというだけのこと。

セルビア映画であることを踏まえればよりその寓意性は深みをもって迫ってくる。

主要人物たちも多様なバックグラウンドを抱えた、個性的なキャラクターばかりだが、花嫁を連れ戻そうとする英国将軍が派遣した兵士たちは当の将軍という人物も含め、ほとんど素性の知れない、『もののけ姫』の唐傘連みたいな人間性のない不気味な集団として描かれている。

人間たちに加え、これまでのクストリッツァ映画同様たくさんの動物たちが登場する。

ハヤブサ、ガチョウ、豚、ヘビ、ロバ、犬、羊、ウシ、ニワトリ、ヤギ、猫、熊…

音楽に合わせて踊るハヤブサ、燃える翼で逃げ飛ぶガチョウ、ドン・キホーテさながらロバにまたがるコスタ、戦争の無残さを知らしめてくれる羊たちへの砲弾シーン、熊との友情など、要所要所で動物たちがいい画を作っている。

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