ヘイズコードとはなにか

ヘイズコードとは、1930年代にアメリカ合衆国で映画産業に対して設定された倫理規定のことです。このコードは、映画における裸体、性的描写、暴力、薬物使用、宗教的・政治的表現などについての基準を定め、映画の内容を制限することで、アメリカ合衆国の社会規範に合致したものにすることを目的としていました。

ヘイズコードは、映画の内容についての規定を設けるとともに、映画産業に対して監視の役割も担っていました。映画産業には、映画公開前にコードに則った内容かどうかを審査する「映画審査会」が設置され、審査に合格した映画には「承認印」が付与され、公開が許可されました。

ヘイズコードは、当時のアメリカ合衆国の保守的な社会風土に合致していたため、映画産業に大きな影響を与えました。例えば、映画における性的描写は厳しく制限され、キスシーンにも一定の制限が設けられました。また、犯罪者が美化されたり、薬物使用が描写されることも禁止されました。

しかしながら、時代が変わるにつれて、ヘイズコードは批判を浴びるようになりました。1960年代以降、社会的変革が進み、性的・人種的な多様性が求められるようになったため、ヘイズコードの規定は社会に合わなくなっていたのです。このため、1968年には「映画倫理規定」が制定され、映画審査会は「映画協会評議会」に改組されました。新たな規定は、過去の厳格な規制を緩和する一方、映画の公開における責任を促進することを目的としています。

現在、映画の制作・公開において、ヘイズコードがかつてほどの影響力を持っているわけではありませんが、映画産業において倫理的な責任を果たすことの重要性は変わっていません。映画が社会に与える影響は大きく、人々の意識や価値観に影響を与えることがあります。そのため、映画の内容は、多様性や包括性を考慮し、社会的に受け入れられるものであるべきです。

近年、映画産業では、多様性に対する取り組みが進んでいます。多様性を反映した作品の制作や、マイノリティーに焦点を当てた作品の公開が増えています。また、ヘイズコードに代わる倫理規定として、映画業界で自主規制を行う「MPAA（Motion Picture Association of America）規定」が制定され、映画の審査や評価を行っています。

しかし、依然として、映画の中には差別的な表現や、偏った視点が含まれることがあります。このような表現が人々の偏見や差別意識を助長する可能性があるため、映画産業においては、作品の制作や公開に際して、多様性や包括性を考慮することが必要です。

また、映画産業が国際的な産業であることから、異なる文化や価値観を持つ人々に対する配慮も必要です。このため、映画産業においては、グローバルな視点を持つことが重要となっています。

結論として、ヘイズコードは、アメリカ合衆国の保守的な社会風土に合致した映画の制限規定でしたが、時代が変わるにつれて批判を浴び、新たな倫理規定が制定されました。映画産業においては、多様性や包括性を考慮し、社会的に受け入れられる作品を制作することが求められています。