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建設の頓珍漢②【毎週ショートショートnote裏お題】

いくら安いからと言って、こんな部屋を借りるのはどうかと思う。

俺が務めるITベンチャーの事務所はある建物の二階にある。しかし、そこに至る階段が存在しなかった。

出入り口のドアを開けてみても、外には何もないのだ。だから、うっかりすると、そのまま地面に落ちてしまいそうになる。

事務所の出入り口を外側から眺めれば、建物の二階の壁面に突然ドアが現れる格好だ。前に見かけた時は「妙な建物がある」と感じただけで、まさか自分がそこで働くようになるとは思いもしなかった。

二階にあるドアへの上り下りには、縄梯子を使う。前の使用者が置いていったモノらしい。確かに、この部屋から引っ越していった先で、縄梯子を使う機会はないだろう。

慣れてしまえば悪くない。

そう思っていたが、同僚の一人がこの前、過去に未成年女性に手を出していたと言触らされて以降、この階に一つだけあるトイレが女性専用になった。

この部屋を選んだ事と奴の過去、キモ眼鏡には恨みしかない。


(410字)
作品タイトルは、たらはかに(田原にか)さまの企画からお借りしました。

「建設の頓珍漢」の話も5編執筆予定です。また、この作品はオチに過去作の設定を使っているため、独立したショートショートとして読めません。そのため、この作品への#毎週ショートショートnote のタグ付けは自粛します。

今回は、建設の頓珍漢①で登場した謎の建築物の中の人の物語でした。

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