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認知症対策 お父さんに会いたい①

現在父は入院中だ。
入院している病院には、無料シャトルバスがある。

母はデイサービスに行かない日、
母の足では歩いて1時間半ほどかけ、
1日朝昼2本しか停まらない入院先の無料バスの停留所を目指す。
停留所といっても、「だいたいこの辺り」というだけで、バス停があるわけではない。
バスが見えたら、乗りたい人は手を挙げて停まってもらう仕組みである。

時間の概念がない母は、何時にバスが通るかもわからないまま、好きな時間に行き、そこでバスを待っているようだ。

仕事の合間に、こっそり持たせているAir tagを確認するとバスを待っている位置で動かない。

そして、もう少し待てばバスの時間、と言う時に
なぜか家の方向へ戻っていく。

何度時間を教えても、玄関先にバスの時刻を書いて貼っても、同じことを違う時間で繰り返す。

仕事が休みの日の前日に
「明日用事が済んだら病院車で連れて行くから家に居てね」
と伝えていたのに、
途中Air tagを見ると、バス停へ向かっているような動き。
案の定、迎えに行くと居ない。
改めてAir tagを確認すると、戻ってきているようだ。
家で待つことにしたのだが、なかなか戻ってこない。
ようやく帰ってきたかと思えば第一声
「お父さんのところに行ったのにバス行ってしまった」という。
いや、そんなはずはない。バスの時間はこの話をしている今頃なのだから。

母の荷物を見るといつも持っている小さなバックだけ。
「お父さんの着替えは?」と聞くと
不思議そうな顔。
面会に行く時は着替えの肌着を持っていかなければならないのに。

家で待っていてと言っても居ない、持って行かなければならない肌着は洗濯さえしていない。
カッと腹が立って、「今日はもう連れて行かない」
と言うと、母は
「お父さんに会いたい」と呟く。

その声を無視して、家を出た。
昼ごはんもまだだったので、お腹が空いていたので
食事に行くことにした。

食事が終わる頃、もう一度Air tagを見ると……
また病院に向かっている動き。

もう、バスはないし、
面会時間終了まであと40分
到底間に合わない。

Air tagが感知したのは30分前。
どこまで行っているだろうか?
通りそうな道を探していく。

探すこと20分ほど。
とぼとぼ歩く後ろ姿を見つけた。

車を横付けし
「どこに行くん?」と聞いた。

「お父さんの病院」

そして、着替えはやはり持っていない。

ただ、「お父さんに会いたい」だけなのである。


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