見出し画像

ある奴隷少女に起こった出来事 ~アメリカの奴隷制度~

奴隷制度は歴史の記録が始まって以来、各地域で千差万別な形態で確立されてきました。一般的には侵略した国が、侵略された国の住民を奴隷として自分たちに都合の良い生き物(ヒトではなく)として扱っています。そして繁栄の歴史を築いてきました。

 

アメリカの奴隷制度

アメリカ南部で、奴隷制度が始まったのは、1619年に20人のアフリカ人が、バージニア州ジェームズタウンに到着したときとされます。1776年にアメリカはイギリスから独立しますが、そのときでさえ白人は、黒人が同じ国民であるという意識はあまりなかったようです。

1861年から1865年までが南北戦争が勃発しています。奴隷制度が定着している南部と先進的な考え方の北部との内戦です。1865年に北部が勝利をおさめ、「アメリカ合衆国憲法修正第13条」が成立し、その時に奴隷制度は終点を迎えたされます。

246年続いたことになります。奴隷となった人は数百万人に及ぶと言われています。

「ある奴隷少女に起こった出来事」

”プレゼントに送りたい本ベスト10”のようなサイトでこの本の名前を見つけました。新潮文庫でハリエット・アン・ジェイコブズが書いた実話です(堀越ゆき訳)。

主人公のリンダ(著者自身)は、奴隷の母親から生まれ、生まれたときから奴隷です。その彼女は奴隷としては比較的恵まれた環境で幼少期を過ごしますが、所有者の死によって中年の医師が実質の所有物となり、悪夢のような日々が始まります。

リンダが15歳になると所有者が、いろいろな手立てで性的関係を強要しようとします。自分にはそれを拒む権利はなく、好きな人と結婚することができないことを知ります。そんな生活に疲れ果て、別の白人男性の子供を身ごもります。

産まれてくる子供の身分は法律によって「子は母の身分に付帯する条件を引き継ぐ」ことになっています。つまり産まれてくる子供は自分と同じ奴隷になることを再認識して、絶望します。

南部アメリカは白人社会であると同時に男性社会でもあったようです。所有者である白人が奴隷の女性との間に子供を作っても、それは奴隷であり、この子供を奴隷でない立場に変更することは社会的に問題のある行動であったとまで記載されていました。奴隷制度を継続させるための条件なのだと理解できます。

時代と国が異なるのにとても読みやすい文章に翻訳されています。お勧めです。

現在の奴隷制度

奴隷の定義は「人格としての権利と自由をもたず,主人の支配下で強制・無償労働を行い,また商品として売買,譲渡の対象とされる「もの言う道具」としての人間のこと」を指します。

中国におけるウイグル人、ロシアに移送されたウクライナ人、借金のカタに売られた人々、現代でも奴隷に相当する人は少なくありません。少しだけでも寄り添いたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?