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 真夜中に近い朝に

 酒臭い息で目が覚めたのは今から一時間前である。もちろん寝苦しさや寒さで起きた訳ではない。日課と化しつつある連載小説の続きを書く為である。noteに書きながらも内心ではかなり焦っている。
 この矛盾する行動はアレだ。次作の為と自身に言い聞かせてネットで情報を漁る。または気分転換と決め込んで無料の漫画を読んだり、技法を学ぶ為と積んでいた小説を読み込む。要するに現実逃避ってヤツである。
 よく分かっているのだがやめられない。問題は連載中の小説にもある。思い付きで書き始めているせいで先の展開を全く考えていなかった。短編小説になる予定が大きく狂った。読まれた数が目に見えるPVの存在が大きい。日に日にその数が増える。比例してブックマークもされる。先の展開を期待されるとそれ以上の面白さを提供したいという気分になった。
 その状態で二か月が過ぎた。話数は四十となった。文字数に換算すると九万を超える。あと少しで十万、長編小説の仲間入り。公募に出せる直前の現実逃避には、もちろん理由がある。連載先のサイトは十八禁でエロに特化していた。名前くらいは目にしたことがあるかもしれない。小説家になろうのグループサイト、ノクターンノベルズである。

「あっ、そこ、イイ。もっと、んぁぁ……深くぅぅ、もっと突いてェェ!」

 このような台詞を愛らしい少女に何度も言わせた。腰が抜ける程、主人公を酷使した。トイレやカラオケ、駅の待合所で行為に励み、犯罪スレスレ(アウト?)のスリルを味わった。疑似体験するように作者である私も少なくない興奮を覚えた。その回数が増える毎に執筆の速度が落ちてきた。喘ぎ声や行為に励む場所に限界が見えてきて、まあ、このような時間にnoteに逃げ込んでいる次第である。とは言え、普通の話ではないので現実味のない行動も可能ではある。主人公の男子高校生の相手は女性の幽霊なので。

まずはセックスから始めようhttps://novel18.syosetu.com/n2645in/

 なんの捻りもないストレートなタイトルが我ながら恥ずかしい。短編小説のつもりで書き始めたことが容易に想像できる安直なものとなっている。もう少し人気が出れば改題する可能性は大いにある。今すぐ変えたいという衝動に駆られているので確率としてはかなり高い。
 ノートパソコンの下部を見ると表示が五時半を少し過ぎていた。そろそろ現実逃避をやめて連載小説と向き合わないと。それとこの書き込みが宣伝になれば無駄な時間を過ごしたことにはならないと思う。なれば、の話ではあるが。

 それでは、また。

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