ESくん
もっと競技人口が増えてもいいと思うんだけど、読書って。まぁ、他所は他所、家は家の価値観ではあるけど。
EMちゃん
競技って(笑)、まぁ確かにそうね。SNS だとたくさん見かけるのに、周囲には数えられる人数しか、習慣的に本を読む人っていないわね。
ESくん
読書って十種競技ぽくない? ボクなんか本を読んでなかったら、時間が大分と余って仕方がないけどね。
網口渓太
プロもアマもないし、読書をしていたってお金が儲かるわけでもない。むしろ部屋が狭くなって家族から嫌味を言われる(笑)。あと、読書をして知識が増えたからといって異性にモテるわけでもないからね。深く考えない方がやりとりがスムーズでしょ。むしろ、千葉雅也さんが『勉哲』で書かれているように、キモくなる期間がしばらくある。理由は様々にあると思うけど、性とお金の問題が根っこにあると思うよ。
ESくん
性とお金か、一概には言えないだろうけど、たしかに哲学者とか作家って、生涯独身の方が少なくないよね。彼らは熱心な読書家でもあったけど。プラトンとかニーチェとかヴィトゲンシュタインとか。
EMちゃん
写真をみるとなかなかのイケメンなのにね。ニーチェとかヴィトゲンシュタインとか、どんな振る舞いをしていたのかタイムスリップしてみたいわ。しかし、メンズっていつもアタマのなかが女の子のことで一杯なんだなって、女としては感じるわね。
ESくん
反応速度で察するよね(笑)。渓太くんの話は、何かゾンバルトの『恋愛と贅沢と資本主義』みたいだな。愛妾経済って奴。
網口渓太
流石だね、イメージの背景にあった。男が女にモノを貢ぐ「愛妾経済」が資本主義のルーツだって、ゾンバルトが言ったんだよね。
EMちゃん
やだー、フェミニストから嫌われそうな感じ。
網口渓太
その通りなんだよね。せっかくだから、ちょっと面白い本があるから紹介するね。
ESくん
書き言葉だけど、著者のモテへの熱意か非モテがゆえの憎悪に圧倒されて、この勢いに納得させられてしまいそうになるよ(笑)。話半分だけど、哲学を「現世利益」と並べて語ってる趣旨には多いに同意したい。
EMちゃん
「本当の哲学」とか「モテない苦悩」とか、ちょっとマキシマム・ザ・ホ
ルモンみたいじゃない(笑) 白帯主義的な。
ESくん
ないないか。対象aとか生老病死とか、とかく人間は生きづらいね。本田先生によって、われわれの大好きな浅田彰先生のスキゾの思想も「処世術哲学」、所詮はモテを意識しているニセモノの哲学だと指摘されてますな。
網口渓太
まず細部は置いておいて全体を掴もう。ボクも、読書は「現世利益」を目的としたものではなく、「遊び」、さら
に言うと「深い遊び」だと思っているから、本田先生と意見の元は同じだと思う。
モテ男(女)と喪男(女)に分けて、古代ギリシャから始まる哲学史を読んでいく仕立てが面白いよ。ボクも、ベンヤミンの『パサージュ論』を下敷きにして、遊学の徒として、本を読む読者を大きく3つのプロトタイプに分けて考えていて、
「モテない」と「完結不可能」が重なるね。あるはずのものがないからこそ、想
像力が刺激されて、止められない止まらない「自発的な冒険」になっていく。
ESくん
引用、切れがあるな。そうそう、この前もちょっと話したけどベンヤミン
の遊歩者、賭博者、研究者が登場人物になる「本の街」を渓太くんと作って
て、自分たちのオリジナルを作るというよりも、歴史の分類と流れに沿って、ただ今絶賛編集中です。ポストモダン通りとか、精神分析学通りとか、マルクス広場とか、デカルトの家とか、20世紀のパリをイメージして作ってる。
網口渓太
それぞれ、ポストモダンだったらポストモダンの沿革や代表的な著者が分
かるスライドを作っていたり、ふたりで本屋の歩き方の動画を見漁ったり、
「ハイパー・リーディング」の実装に向けて、激しく駆り立てられてるよね。
EMちゃん
ワタシもデザインとかグッズ制作とかあったら手伝うから、進捗があったらまた、教えて。ふたりは本当、モテとかお金稼ぎとか二の次ね。
ESくん
でもこれだけは言わせて、やっぱり読書はファッションですから!
網口渓太
そう、お洒落です。アナーキーなヨウジです。