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東大vs京大 〜それである意味〜

久野健太

双青戦の価値とは

後輩が聞いてきた。「なんで双青戦盛り上げたいんすか?」
監督が尋ねた。「双青戦って公式戦じゃないのに大事なの?」
旧友が言った。「東大と京大にもガチのサッカー部あるんや」

双青戦に盛り上げる価値はあるのか?

僕自身もこれまで何度も自分に問い続けた。
全ての疑問と驚きに理解ができる。でも納得はしたくない。


はじまり

2020年7月。東大ア式と京大サッカー部でチームを結成し、双青戦を盛り上げるプロジェクトが発足した。京都出身で東大ア式に所属する僕が惹かれないわけがない。チームの一員となった。

遅くなったが、”双青戦”をご存じでない方もいるだろう。
双青戦とは、東大と京大の部活の定期戦を統合化したもので、互いのスクールカラーが淡青と濃青であることからこの名前が付いた。2013年度からこの名称になっている。
この文章ではサッカー部における双青戦を指す。

双青戦は例年7月か8月に開催しているのだが、この頃、コロナ禍の最盛期である。2020年度の大会は中止が決まっていた。このプロジェクトは、2021年度の大会に向けた1年がかりのものとして動き出した。

だがしかし、15人ほどのメンバーが集まったはいいものの、双青戦を盛り上げるってなんだ?双青戦が周りに与えうる価値ってなんだ?そもそも部員にとってどれくらい価値あるものなのか?そんな大前提のところから話し合いは始まった。

これまでの双青戦は、部員とOBの試合で完結していた。でも1年生の時に双青戦を経験して、僕はなにか勿体ない気がした。ピッチ内外において大きな過渡期を迎え、「日本一価値のあるサッカークラブ」を目指す東大ア式にとって、誰もが知っている"東大と京大”でできる何かがあるはずだと感じていた。

長く数回に渡るミーティングの末、双青戦のビジョンとして、以下の三本柱が掲げられた。

「双青戦を通じて、両部活・双青戦を認識し、楽しみ、愛してほしい」

  • 認識:双青戦を通じて、学内外での両チームの認知度の向上を図ると同時に、東大京大生×サッカーに知的でカッコいいというイメージをアピールする

  • 楽しみ:双青戦を、サッカーを中心とするエンターテインメントとして、観客部員が一体となって楽しめる場にする

  • 愛する:双青戦を、チームに愛着を持ち、これから両チームを応援したいと思わせるきっかけとなるような試合にする

運営チームは各々がイメージする双青戦を実現するべく、このビジョンを大きな方向性として、ようやく前進を始めた。インパクトを与えたい対象や仕事内容で6ユニットに役割を分担し、定期的に進捗管理しながら、それぞれでビジョン達成に向けて活動を始めた。僕は複数のユニットに属して活動を行った。いわゆる0→1のような経験が初めての中で、新しいプロジェクトに対して、うまく組織体制が整って動き出した感覚があって楽しかったことを覚えている。





延期

うまく運営チームが動き出したが、開催予定は約一年後の夏である。ここからは比較的ローペースで準備が行われていた。秋から冬にかけ、各ユニットで双青戦に絡めて行うことが構想段階まで固められていった。それそろ外部の人を巻き込む動きに移ろうかとしていたその矢先の2月某日、

2021年度双青戦 中止決定

コロナ禍でリーグのチーム数が増加したことによって日程確保ができなくなったのである。その可能性は常に考えていたし理由も仕方なかったが、まあ残念だった。一緒に中心になってプロジェクトを進めてきた一個上の代は4年生として最後の年である。彼らが現役の間にこれを実現することは叶わなかった。

そして、代替の大会として2022年2月に開催することが決定し、一度チームは休止することになった。





再始動

8月ごろ、下級生も新たにチームに組み込んで再始動した。これまで頼りにしていた先輩たちにとっては、自分達が引退した後に行われる大会に向けての活動である。特に京大の先輩には力は借りつつも、これまでの流れから必然的に、中心となって動かすのは私になった。前年7月の大会に向けて考えてきたものを引き継ぎ、実現する必要がある。

これまで構想段階に留まっていたものをブラッシュアップし、実行に移していった。それと同時に、外部会場の確保も必要だった。学内での定期戦は禁止されているため、またこの計画の目的となる部外の観客を呼ぶための2つの理由からとなるが、私が知る限り双青戦では初の挑戦である。観客を入れた試合を行える会場は都内にほとんどなく、ようやく見つかった足立区の舎人公園で9倍の抽選をぶち当てた。

その頃、世の中がどうだったかというと、コロナの脅威が収まり始めた頃だった。緊急事態宣言も解除され、まん防がちょこちょこある時分。ただ、エンタメ系のイベントは、実施すると物議を醸す風潮にあった。この不安定な状況で開催できるのか?観客を入れるべきか?悩み続けた。ただ、このコロナ期間に巻き起こったさまざまな議論を通して感じた確かなことは、明確な正解のない問題がたくさんあるということだ。どういうリスクを冒してどういうリターンを得たいのか。私たちは、当時としては珍しい、有観客開催を行うことを決意した。

とはいえ、どのタイミングで情勢が変わるかもわからないため、行えた企画は、高校生に対するオンライン座談会や東大・京大サークルとのSNS企画、部員を多く動員した広報物といった、オンラインベースのものとなった。そんな中でも、双青戦開催リリースの2022/1/1の直前からは、毎日のように担当者と連絡をとり、いよいよ開催できるんだという高揚感があった、その開催の本当に直前、たった6日前、

2022年2月双青戦 中止決定





再再始動

ここまで読んでいただいている方、またその展開かよって思われたかもしれない。でもまだしばしお付き合い願いたい。私はこの時、その何百、何千倍もそう思ったのだ。理由は京大サッカー部の活動制限によるものだった。致し方ないが、こんなにも報われないものかとかなり落胆した。次の大会の開催予定は、2022年の8月上旬。

運営チームに頼れる先輩はもうおらず、同期も京大に1人だけ。そして私の代が、双青戦を知る唯一の学年となった。二度の中止で、運営チーム立ち上げ当初の勢いも明らかに落ちていた。この大会で、部内外の人に対し、双青戦が魅力的なものだと思わせられなければ、この計画は終わるだろうと思い、再び覚悟を決めた。そこから開催当日まで、双青戦について思慮をめぐらせたり、誰かに連絡したり、ミーティングをしたり、何もしない日はない。

ここから強烈に意識したことは2つ。

・今大会でより多くの集客をしてインパクトを残すこと。

・部員に当事者意識を持たせること。

泥臭い方法でもいいから、まずは観客をたくさん呼ぶ。これが部員に対しても、部外の人たちにとっても双青戦を大きなものとして認知させる分かりやすい方法だと考えた。次に、部員の巻き込み。しんどいことだが、できるだけ仕事を後輩に振るようにした。自分でちゃっちゃと片付けた方が楽な時もあったが、なるべく多くの後輩に、自分達でこの大会を作っているんだという意識を芽生えさせたかった。





開催

2022年8月6日、7日


念願の双青戦開催


舞台は西京極総合運動公園。数年前まで、Jリーグの京都サンガF.C.のホームスタジアムだった会場だ。

メインスタジアムに隣接する補助競技場も借り、人・時間・場所全てを使い果たし、周囲からのたくさんの協力を得て、実に多くのことを実現できた。

①双青戦カップ

開催地京都のサッカー少年団6チームを招待し、第一回双青戦カップを開催した。各チームを招待し、大会要項を作成し、準備し、当日運営するまでにはなかなかの労力がかかる。小学生を対象とするサッカー大会の運営は初めての試みであったが、一軍戦の応援に駆けつけてくれる小学生や保護者の方も多く、とても充実した内容になった。

双青戦カップを開催

②京大カップ

京大のサッカーサークル7チームと東大ア式スタッフチームからなる計8チームによるサッカー大会も2日間に渡って開催。双青戦カップ同様、一つの大会を運営するのには大きな苦労が伴う。しかし、普段は関わりの薄い、部外の京大生と接点を持つ第一歩として、その苦労を上回る価値があった。

京大カップを開催

③進学相談会

関西の進学校を対象に、オフラインによる進学相談会を行った。東大生と京大生に同時に進学相談をできる機会は、進学校に通う高校生にとって魅力的なものだと考えた。今回参加した高校生の数は思うように伸びなかったが、中高生との関わりは今後双青戦の鍵となっていく部分だと思う。

④スタジアムグルメ

関西を拠点とするキッチンカー3店舗によるスタジアムグルメを展開した。これも両部でこれまで経験のない取り組みだったが、当日は大盛況となり、観客の方々にとってより良い時間となるためのものとして大きな意義を果たした。

⑤3社企業からのスポンサー提供

最近認知度も高まってきた東大ア式プロモーションユニット・京大サッカー部スポンサー班に協力してもらい、武蔵コーポレーション株式会社様、株式会社フィールドマネジメント様、白潟総合研究所株式会社様の3社から、双青戦に対するスポンサー提供をいただくことができた。これだけ大々的な大会を開催するのには必要不可欠であった。

⑥洗練された広報

大会に向け、数多くの画像・動画を用いたSNS広報に加え、YouTube生実況やTwitter速報、パンフレットなど、普段の広報ユニットの活動の結実と言える質の高いものを発信できた。

パンフレットの表紙(最下部にはスポンサー3社の社名)


オーロラビジョンを用いた選手紹介


これら多くの企画のメインイベントとしての1軍戦は、
679人の観客に見守られる中、白熱した好ゲームで2-2の引き分けに終わった。その熱は、ピッチ上からも、スタンドからも感じ取れた。

679の観客が駆け付けた
試合中の一コマ





おわりに

大会が終わってふと1人になった時、達成感と解放された気分の入り混じる不思議な感覚を味わった。
当日とそれまでにこれだけの企画を作り上げるまで、相当の準備が要ったし、時間は2年もかかったし、何より精神的負担は大きかった。個人的な話にはなるが、選手として上手くいっていない時期や、2度目の中止決定時、そこから大会開催までの約半年は、それぞれ微妙に感情は違えども、苦しかった。

ただ、最後までやり切り、結果としてこれだけ多くの人を巻き込んだ大会を実現できたこと、自分がいる間に、双青戦を知らない世代にこの大会を見せることができたことは本当に良かったと思う。今後も、部員とOBの思いを大切にしながら、関わる多くの人にとって価値のあるように発展させてくれたら嬉しい。

大会終了後、後輩の何人もがとても楽しかったと口にし、新たに運営チームに入ってくれる者もいた。
人生最高の舞台だと言ってくれる同期もいた。
次の双青戦を引っ張っていく後輩は、双青戦じゃなきゃできないことってあるんですね、と感じ取ってくれた。

あなたがもし、東大のライバルは?と聞かれると、京大と答えるだろう。逆もまた然りである。日本人のほとんどがそう答えられるライバル関係なんてそう多くない。

一度足を運んでもらえたらその答えはわかるはずだ。


双青戦に盛り上げる価値はあるのか?」




東京大学運動会ア式蹴球部
久野健太

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