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グリーンの眼差し 第一章 

 ふと視線を感じた。
 視線の先には少しグリーンかかった目で彼女がグレーのコートを纏って、僕の方を見ているのを気づいた僕はチラッと見ながらやり過ごした。
 
 彼女との出会いはこんなシンプル感じで、シュッとした顔が少し寂しげに思えなんとなく気にかかった。
 次の日の朝もまた、次の日も……、寂しげな彼女になにか事情が有るんだろうと、話がしたくなり声をかけたが知らんぷりされ「あ〜、これがツンデレってやつか!」と思った。  

 「あなた!」とキッチンから妻の紗英の声が聞こえて、何故かドギマギしていて「えっ、何?」と僕が言うと紗英が「なに、デレデレしてるの?」僕は、 「別に。」と言い返した。
 そんな会話をして間もなく、彼女がグレーのコートを纏い窓から顔を出した。

 窓から顔を出したのはツンデレの彼女で、彼の妻と言うのを視察しに来た訳ではなくシンプルに会いに来ただけでいつも一緒に居たいとはこれっぽっちも思っていないが、紗英が不意に彼女に気が付いた。
 紗英が「なんで…、黙ってたの…」と言いかけたので、僕が「ごめん!」と先にあやまった。

 紗英が「かわいい!」と言ったのが意外で思わず、僕は「えっ!」と口からこぼれたのは秘密がバレたからだった。
 「なんて素敵なグレーなの」と紗英が言うので、僕は「そうなんだよ~」と。
紗英が窓を開けグレーの彼女と御対面した。

 紗英は落ち着き払い、僕に向かって「大丈夫だよ、武治」と、紗英は強がってそんなふうに言ってるのだろうと思い、「紗英、大丈夫?」と……。
 
 暫く紗英の様子を伺っていたが変化はなく、どうやら本当に大丈夫みたいだ。
「でも、秘密はなしだよ。」と紗英が、少し寂しい顔で言ったが、また窓の方を見て微笑んだ。

 紗英からの公認を受けてからは堂々と彼女と会うことが出来る様になったが、気ままな彼女のペースで約束は出来ずにもどかしく感じていたが既婚者のくせにそんなに都合良く考えてはいけないと僕は感じていた。
 「最近、彼女来ないね。怪我でもしたのかな?」と紗英がつぶやくと聞こえていたかのように、窓辺から顔をヒョッコリと現れつぶやいた紗英と僕は驚いきなから喜んだ。
 紗英が「せっかくだから、夕食でも……。」、すると彼女が頷き食事を共にした。食事が終わると彼女の礼儀なのだろか静かに帰っていく、次の日も、またその次の日も食事を一緒にするようなになり少しずつグラマーになっていて、気のせいか少し寂しげな表情が消えてきた。 紗英と僕には柔らかい時間が流れて、彼女と一緒の夕食が暗黙の了解となつた。
 そんな日が数週間続いたが、ある日を境に彼女が来なくなった。不思議な事に紗英と僕は寂しさを覚えて、何か大切なものを無くした様な気持ちを覚えた。

 彼女が来なくなり元と同じ2人暮しに戻っただけなのに、物足りのさ感じながら季節はひまわりが咲くへと移り変わり毎日を過していた。
 ある日曜の朝に階段を駆け上がる紗英の足音に驚いき起きた僕だったけども、紗英の一言が目が覚めた。紗英が「彼女が来たよ。」と確かにそう言ったのだが、聞き間違いかなとまた横になろうとしたら、紗英が「武治!!」と言われ急ぎ起きて階段を降りて窓辺を見たら、彼女が“凜”として歩いて来るのが見えた。
 なめらかで少し先が曲ったなグレーのシッポを立てながら小さな我が家の庭と言うには少し恥ずかしいが、堂々と行進して僕と紗英は喜んで部屋の中でハイタッチをした。

 時折彼女は後を振り向くので紗英が「どうしたんだろう?」と言った時、3本の尻尾が右に行ったり左に行ったりしながら、彼女の後ろから来るのが見えた。
 僕と紗英に彼女は紹介するかのように、3匹を連れて来て挨拶を交わした。
3匹はそれぞれに纏うコートが違い、また性格も違う。 駆け回っているを見て紗英が「魚のサバみたいなシマがはいってるのは、サバトラって種類でしょ!」意外にも紗英は詳しく、「寝そべっていて体が少し大きいのがトラジ」、「あまえていて、白、黒、茶の3色は三毛」と説明してくれた。
 紗英が「名前を付けなきゃね。」と、言うので2人で名前を付け始めたが、母親の彼女には許可は得ていない。
サバトラのやんちゃな子は、アライグマみたいだから“ラスカル”、トラジマ寝そべってる呑気なのが“ノン”、3色は甘えん坊の“'ミク”と名前を付けた。
 紗英が「そう言えば彼女さんは名前がないね。」、紗英が皮肉ぽく「彼女さんの名前は武治がつけて!」と言ったので“美々”とつけた。グレーを纏い、グリーンの色の目が美しいからなのは紗英もすぐわかった。


 こんなゆるい感じで僕と紗英と美々と3匹の仔猫達の時間が始まった。

 



 




 
 


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